【原文】
成信の中将こそ、人の声はいみじうよう聞き知り給ひしか。
同じ所の人の声などは、常に聞かぬ人はさらにえ聞き分かず。
ことに、男は人の声をも、手をも、見分き聞き分かぬものを、
いみじうみそかなるも、かしこう聞き分き給ひしこそ。
【語釈】
◯「成信の中将」
源成信。村上天皇の孫にあたり、藤原道長の養子になった人。23歳で出家。
◯「え聞き分かず」
「え~否定」は副詞の呼応の一種で、不可能を表す。つまり、「聞き分けることができない」と訳すことになる。ちなみに「聞き分く」は四段活用。
◯「手」
重要語で、文字・筆跡の意味。
◯「かしこし」
この語にはA「畏し」系とB「賢し」系がある。Aは①おそれ多い②ありがたい、の意味を持ち、Bは①利口だ②優れている③巧妙だ④並々でなく(連用形の時のみ)、の意味を持つ。ここではB-③巧妙だ、を使う。
【現代語訳】
成信中将は、人の声を聞いて「誰それの声だ」ととってもよくお分かりになったのよ。
同じ場所にいる人の声なんて、常に聞かない人の声はまったく聞き分けられないと思うんだけど。
特に、男性なんて、人の声も、筆跡も見分けたり聞き分けたりしないのに、
非常に小さい声でも、巧みに聞き分けなさったの。
「利き酒」というのがあります。
お酒の味を鑑定・判定することです。
「利き声」というのは造語になると思いますが、声を鑑定・判定するということになるでしょう。
Googleで「利き声」と検索してみたところ、他にもこの言葉を使っている人がいるようです。
さて、清少納言は「男性は人の声を聞き分けられない」と一般論のように述べていますけど、どうなんでしょう?
ちなみに、他段では「男性は記憶力がない」とも書いています。
まあ、記憶力に関しては確かに女性の方が優れている傾向にあるような気がします。
ただ、声に関しては、男も女も関係ないように思います。
もちろん、当時は今のように男性と女性がラフに語り合う機会が少ないということを考慮しても、
いや、そうであればますます女性の声に対する関心は高いと思うのですが。
ま、当時の話はさておき、自分自身もけっこう聞き分ける自信があります。
純粋に声質だけじゃなくて、イントネーションのクセや発音の特徴なども含めて、ですけど。
真面目なところでは、授業で教室に入る時、休み時間中に誰と誰が話してるというのももちろん分かります。
あるいは、歌手の声なんかは聞き分けられる人も多いと思います。
今はさっぱりですが、昔のモーニング娘。も分かりました。
昔、というのは後藤真希ちゃんが在籍していた頃です。
モーニング娘。も初期から追いかけたわけではないので、あとから勉強したのですが。
「おもいで」という曲が当時の教材(笑)でした。
やっぱりまだ夜は肌寒い 浜辺に一人でいるせいかな(中澤裕子)
あいつは今どこでどんな子と 波の音を聞いてるかな(飯田圭織)
誰にでも優しすぎるあいつに ジェラシー感じた 正直にちょっとすねたりできたら(保田圭)
今でも二人でいたかな(後藤真希)
Ah思い出は(矢口真里)
この波のように(市井紗耶香)
静かに今も(矢口真里+市井紗耶香)
ゆらゆら揺れているけど(市井紗耶香)
Ah思い出の(安倍なつみ)
この海に着けば(後藤真希)
懐かしすぎて(安倍なつみ+後藤真希)
涙があふれてきたわFu(安倍なつみ)
これを聞いて、当時のメンバーの声は完璧に聞き分けられるようになりました。
対してAKB48は歌(シングル曲)になると極端に分かりづらいです。
劇場のユニット曲ならそんなことはないですが。
でも、トークでの声の聞き分けならかなりいけます。
オールナイトニッポンで名前を明かさずに3人でオープニングトークをするのは大抵あてられます。
たぶん、ファンの人はほとんどそうじゃないかなと思いますけどね。
てことで、あんまりしまってない気もしますがおしまいです。
では。
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