徒然草～あだ名～

あだ名。ニックネーム。愛称。異名。

あだ名をつけられたことがない、という人ってどれくらいいるんでしょう？

かなり多くの人があだ名を持っている(持たされている)ように思います。

あだ名は親近感を生むことが多いですよね。

あるいは本人に知られないように密かにつけるあだ名というのもあるかと思いますが。

それはあだ名というより、もはやコードネームでしょうか(笑)

そんなあだ名にまつわる『徒然草』の文章がこれです。

【原文】
公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは、極めて腹あしき人なりけり。
坊の傍らに、大きなる榎の木のありければ、人「榎木僧正」とぞ言ひける。
この名、然るべからずとて、かの木を伐られにけり。
その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひけり。
いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡大きなる掘にてありければ、「堀池僧正」とぞ言ひける。

【語釈】
◯「公世の二位のせうと」
藤原公世(きんよ)は箏の名手だったらしい。「せうと」は「兄人」と書き、兄または弟のことを言う。

◯「腹あしき人」
「腹あし」には①怒りっぽい②意地が悪い、の２つの意味がある。文脈上ここでは①。

◯「坊の傍らに大きなる榎の木のありければ」
「坊」は「僧坊」などと言い、寺院に付属した僧侶の住まい。「榎の木」はこちら。

◯「きりくひ」
切り株のこと。

これは『徒然草』の45段です。

あだ名をつけられて怒り心頭の良覚僧正です。

関係ないですけど、「怒り新党」って番組面白いですよね(笑)

さておき、あだ名をつけられるのが気にくわなかった良覚僧正。

こればっかりはその人の性格なので何とも言えませんが。
（ちなみに、「堀池僧正」とあだ名されていたのは史実では良覚僧正ではないそうです）

ところで、あだ名には由来があるのが普通です。

今回のも住まいの近くに榎の木があったことから端を発しています。

自分が中学の時「田中君」のあだ名が「でんちゅう」でした。

確かに柔道部で大柄な人だったのですが「電柱」から来ているのではなく、

「田中」を音読みして「でんちゅう」でした(笑)。

あるいは掛詞だったかもしれません。

名前の音を一部変形させるのはあだ名の典型ですね。

ＡＫＢだと、

「松原夏海」→「なっつみぃ」とか

「高橋みなみ」→「たかみな」とか。

一方、名前からはよく分からないあだ名というのもあります。

「大島優子」→「コリス」とか

「中塚智実」→「クリス」とか。

大島優子を「コリス」と呼ぶ人は今あまりいないようですが。

「小リス」説とか、色々あるみたいですけど詳しくは知りません。

中塚智実の「クリス」は使われているあだ名です。

これは「滝川クリステル」に似ているから「クリス」です。

自分自身を振り返ってみると、名前とは関係ないあだ名ばかりです。

小学校から高校まではもう一貫して一つのあだ名がありましたがこれは秘密です。

恥ずかしいからではなく、ＡＫＢ関連のハンドルネームにしているからです(笑)

大学ではあだ名らしいあだ名はありませんでした。

そして今。

「横浜緑吹奏楽団」に入っているわけですが、ここではなぜか「ダニエル」と呼ばれています(笑)
Σ(￣￣￣Д￣￣￣lll)　ﾅﾝﾃﾞﾖ

まあ、由来はあるんですけど、書くと面白くないので書きません。

ちなみに、『徒然草』ですが、今回のすぐ後の46段もあだ名の話、

たびたび強盗に入られた僧侶が「強盗法印」とあだ名された、というエピソードが紹介されています。

【現代語訳】
公世の二位の兄弟で、良覚僧正と申した人は、非常に怒りっぽい人だった。
僧坊の近くに大きな榎の木があったので、人は「榎木僧正」と呼んだ。
良覚僧正は「このあだ名はけしからん」といってその木を伐ってしまわれた。
ところが、根本が残っていたので「きりくいの僧正」と呼んだ。
いっそう腹を立てて切り株を掘り取って捨てたところ、その跡が大きな掘のようだったので、「堀池僧正」と呼んだ。

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