私が憎悪の念を募らせているのも知らずに、
今度は箏の琴を盤渉調にして今風に弾いている、その音色に才気は感じるものの、
わざとらしい風流気取りには目を覆いたくなる心地がしました。
ただ時々愛を語らうくらいの宮中の女房などが風流をきめこんで好色めいているのは、
それはそういうものとして付き合う分には面白いでしょう。
しかし、たまにであっても通っていく妻とするには信頼できず、行きすぎたところがあるようで心が離れ、
その夜のことを口実にその女とはきっぱりと別れました。
この二つの事例を考えあわせますと、
若いころの心にさえ、やはりそのように目立ちたがりの女はとてもいかがわしく信頼できないと思われました。
まして、今となってはなおさらです。
心の赴くままに折ったら落ちてしまいそうな萩の上の露、拾えば消えてしまいそうな笹の上の霰などのように、
優美でか弱い感じの風情ばかりに、興味深く御心をひかれなさるでしょうが、
今はそうでも、あと七年もすれば私の言っていることがお分かりになりましょう。
私のお粗末な教訓から、浮気性な女とは距離をお置きください。
そのような女はきっと過ちをおかして、みっともない噂を立て、夫が恥をかくことになるのです」
と忠告をするのでした。中将の君は例によって頷いております。
光る君は少し笑みを浮かべて、なるほどとお思いになっているようです。
「両方とも外聞が悪く、きまりの悪い話だなあ」といって、皆でお笑いになるのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
前回の「律りちの調べ」に続き、今度は「盤渉調ばんしきちょう」と出てきました。
三省堂「詳説古語辞典」によると(←またかよ!)
「雅楽の『六調子ろくてうし』のひとつ。『盤渉』を主音とする調子。」だそうです。
分かんねーっつうの。笑
懲りずに「盤渉」を調べてみると、
「『十二律じふにりつ』のひとつ。壱越いちこつから十番目の音。西洋音楽の『ロ』に近い音。」だそうです。
ほうほう。なるほど。
「ロ」の音、ということは「H」の音または「シ」の音ですな。
ロ長調の曲っていうと、調べたところ歌劇『リゴレット』の「女心の歌」とか。
ロ短調の曲っていうと、調べたところ「天才ドロンボー」とか。
まあ、絶対に盤渉調とは似ても似つかない調子でしょうけどね。笑
さて、久しぶりに光源氏のご登場です。
笑っているだけですけどね。
左馬の頭の長ーい話がここでようやく結ばれました。
次回からは頭の中将の体験談で、常夏ちゃんのお話でございます。
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