一番鶏も鳴いて、朝が近づいてまいりました。
光る君の従者たちが起き出して、
「随分寝過ごしてしまったなあ」「お車を用意せよ」などと言い合っているようです。
紀伊の守も起きて来て、
「女の方違えではないのだから、夜も深い中をお急ぎになることはないでしょう」などと言っております。
光る君は、「再びこのような機会が訪れることも、まあないだろう。わざわざ訪ねて行くというのも考えにくい。
手紙を通わすのもとても無理なことだ」とお思いになって、たいそう胸を痛めておりました。
奥の部屋にいた中将の君も出てきて、とても心苦しそうなので、
光る君は女君を放しておやりになったのですが、なお引き留めなさって、
「この先、どうやってあなたに手紙を届けたら良いだろう。
またとないほどのあなたの冷淡さ、私の切なさ、たった一夜で様々な深い思い出ができたのは、
世にも珍しい例でしょうね」と言って目に涙を浮かべるお姿は、とても優艶でございました。
鶏もしばしば鳴くのでせかされるような心地で、
「つれなきを恨みもはてぬしののめにとりあへぬまで驚かすらん」
〔あなたの薄情さをまだ恨み足りていない明け方に、どうして鶏までもが慌ただしく私を起こそうとするのでしょうか〕
女君は、我が身の有様を思うと、やはり光る君のお相手として不釣り合いで恥ずかしい気がしますので、
光る君の魅力的な口説き文句も心に響かず、
普段、生真面目で意に沿わないと思って蔑んでいる夫・伊予の介のことばかりが思われて、
「このことが夫の夢に見られてしまうのではないかしら」と考えると、背筋が冷たく、身が縮む思いをするのでした。
「身の憂さを嘆くにあかであくる夜はとり重ねてぞ音も泣かれける」
〔宿命的でつらい我が身を嘆いても嘆いても嘆き足りないまま明けていく夜には、鶏が鳴くのに重ねて私も声を上げて泣かずにはいられません〕
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
夏の夜のアバンチューーールも朝を迎えると同時に終わりに向かいます。
光源氏はこれで終わるつもりなど毛頭ないみたいですけどね。
バカヤローォゥォゥ(」´Д`)」ォゥォゥォゥォゥ
一方の空蝉ちゃんは泣いてばかりの子猫ちゃんで、犬のおまわりさんも困ってしまってワンワンワンワンです。
といわけで今回はここまでです。
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