源氏物語~帚木~(9)


様々な女性の身の上についてあれこれ話し合って、

「ただの恋人として見るときには欠点がなくても、妻として信頼できる女性を選ぶ時に、

多くの中からこの人こそと決めることはなかなかできないものですよ。

男でも、朝廷に出仕してしっかりと世の重鎮となるべき、本物の器を見出すのは難しいはずですよ。

しかしまあ、たとえどんなに優れていても、一人や二人で世の中を治めることができるわけではないので、

上の者は下の者に助けられ、下の者は上の者に従い、広い政治の世界は互いに助け合っているのでしょう。

妻として狭い家を任せる女性について思いを巡らすと、不足があっては困る大事が細々とたくさんあります。

一方が良ければもう一方が悪いなどちぐはぐで、平凡ながらも及第点というような女さえ少ないので、

浮気な心が向くままに人の姿をたくさん見比べようという好みからではなく、

あくまでも、一途に妻を定めるための手立てとするために、

どうせなら自分が根気よく欠点を直したりする必要のない、

思い通りの女はいないものかと選び始めた人は、妻を定めることが難しいでしょう。

必ずしも自分の思い通りではなくても、関係を持った女性との縁を捨てがたく心にとめる人は、

世間から誠実な人だと見られ、またその女性までも奥ゆかしい人に思われるのです。

しかしどうしたものか、世の中の様々な夫婦を見ましても、

想像を絶するほどで、羨ましく思う関係にお目にかかったことはあまりないですよ。

光る君や中将様のような立場でこの上ない女性を選ぶということになると、ましてどれほどの人が釣り合うのでしょう。

私のような気楽な身でさえしっくりくるのはなかなかね。

容貌は小綺麗で、若々しい時には塵もつけまいとばかりに慎重に振る舞って、

手紙を書いても、悠々と言葉を選び、墨も薄くしてもどかしく思わせて、

しっかりと姿を見たいものだとじれったく待たせ、男はほんの少しでも声を聞こうと言い寄るけれど、

女は声をひそめ、口数も少なくするのが、とてもよく欠点を隠すのですよ。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


いやはや、現代語にするのが難しいです。汗

いやになっちゃうよ♪

しかし、紫式部はどういう心境で書いているんでしょうかね。

自分が男性だったら、と仮想して書いているのか、はたまた自分自身の価値観なのか。

非常に興味深いところです。

 

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