元服なさってからというもの、以前のように帝は光る君を藤壺の御簾の内にお入れになりませんでした。
管弦のあそびの時など、藤壺様が弾く琴に合わせ、心を通わせるように笛を吹く光る君は、
幽かに聞こえる藤壺様の御声を心の慰めとして、内裏での生活ばかりをお好みなさるのでした。
五六日内裏にお仕えなさって、大臣邸に二三日赴くなど、訪れが途絶え途絶えでいらっしゃったのですが、
今はまだ幼いお年頃なので、大臣はそれを罪なことだとはまったくお思いにならないで、
光る君を精一杯お世話なさいました。
大臣邸では光る君夫妻の女房たちについても、並々ならぬ美人を取りそろえて仕えさせなさいます。
光る君がお気に召すような御遊びを催し、一生懸命にお世話なさるのでした。
一方、内裏では亡き母君の殿舎であった桐壺を光る君のお部屋とし、
桐壺様に付いていた女房たちをそのまま光る君に仕えさせなさるのでした。
また、桐壺様のご実家は、修理職、内匠寮に帝の命がくだり、またとないほど素晴らしく改築なさいます。
もともと庭の木立や築山のたたずまいなど風情があったのですが、
池を広くしてより立派に造る工事で賑わっていました。
光る君は「このような所に、理想の女性と一緒に暮らしたいなあ」と、ため息ばかりついていらっしゃいました。
そうそう、この「光る君」という呼び名ですが、
これは高麗の人相見が感激したあまりお付けしたものだと言い伝えられております。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
やっと終わりました、桐壺巻。
12月か、遅くも1月には終わると思っていましたが、見立てがあまかったなあ。笑
文中に出てくる「修理職しゅりしき」は内裏の修理や造営を司った役所で、
「内匠寮たくみづかさ」は内裏の修理や造営の他、調度の制作・補修を司った機関です。
次回からは第二巻「帚木」の巻に移ります。
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