2014年 センター試験 古文


早いもので、今年もセンター試験が終わりました。

今年の出典はなんと『源氏物語』! ∑ヾ( ̄0 ̄; )ノ

21世紀に入ってから、平安時代の文章がセンター試験で出題されたのは初めてです。

しかも GENJI-MONOGATARI とは、一体どういう風の吹き回しかしら?

当然ですが、難易度は上がっています。

理系の方々、他の人もきっと出来ていないと思って気を楽に。

文系の人々にとっても時間配分を考えると厳しかったかなあ、という気がいたします。

ただし文系の場合、出来ている子は出来ているに決まっているので覚悟いたせ。

では、さっそく解説をしてみたいと思います。


まずリード文をしっかり頭に叩き込みましょう。

①夕霧大将(光源氏の子)とその妻・雲居雁(=三条殿)の物語であること。
②(父親と違って)浮気性ではなかった夕霧君が「落葉宮」という女性に恋をしてしまったということ。
③わざわざ、「その女性(=落葉宮)の意に反して」深い仲となってしまった、と書いてあること。
④雲居雁は怒って子どもたちのうち数人を連れて実家に帰る所から物語がスタートしていること。

これだけリード文がしっかりしていれば、設問から更なるヒントを得る必要はなさそうですが、

それでも一応設問はサーッと目を通してから本文の読解に移りましょう。

すると、問6の内容一致問題の複数の選択肢にまたがっている内容として、

夕霧が実家に帰ってしまった雲居雁を連れ戻そうとする話であることが見えてきますね。


問1:傍線部訳の問題(5点×3)

ア)いかさまにしてこのなめげさを見じ

まず着目すべきは「なめげさ」。重要語「なめし」という形容詞に、「げ」「さ」という接尾語がついている。重要語「なめし」の意味は「失礼だ、無礼だ」である。この時点で、

②どうすれば私への失礼な態度を見ずにすむだろう
⑤何としても夫の無礼なしうちを目にするまい

の2つに絞れる。「いかさまにして」は「どのようにして」の意味だから②も消せないし、「どのようにしてでも」=「何としても」となるから⑤も消せない。決め手になるのは傍線のすぐ後、「と思しけれ」である。授業中にウンザリするほど言ってきたが、「古文の読解の基本は因果関係に注意すること」である。ここに「ので」と訳す「已然形+ば」があることから、雲居雁は「いかさまにしてこのなめげさを見じ」とお思いになったので、「大殿(実家)へ・・・渡り給ひにける」すなわち、実家へお帰りになってしまったのである。従って、傍線アは、雲居雁が実家に帰った理由を述べた箇所なのだから、⑤で決まり。

イ)らうたげに恋ひ聞こゆめりしを

これもまず重要語「らうたし」に着眼。この重要語は「かわいい」という意味。「~げなり」で形容動詞化しており、その連用形が「らうたげに」である。「~げなり」とつくと「~な様子だ」という意味が添えられる。現代語の「悲しい→悲しげだ」の違いとまったく同じである。選択肢は、

①いじらしい様子でお慕い申し上げているようだったが
②いじらしげに恋い焦がれているらしいと聞いていた
③かわいらしげに慕う人の様子を聞いていたようだが
④かわいらしいことに恋しいと申し上げていたようだが
かわいそうなことに恋しくお思い申し上げているようだったが

従って、まず⑤はあり得ない。
それから「恋ひ聞こゆ」の「聞こゆ」は謙譲語の補助動詞だから、②③④も一気に消えて答えは①。
さて、設問は簡単だがこの近辺は内容が取りにくいと思った人もいるだろう。この傍線部を含むセリフは夕霧のものである。というのは、「らうたげに恋ひ聞こゆめりしを、選り残し給へる」と尊敬語がついているところから判断できる。邸宅に子どもを残してきたのは家出した雲居雁の方で、その「選り残」す動作に尊敬がついているということは雲居雁に敬意を払っていることになるのだから、話者は夕霧ということになる。

ウ)いざ、給へかし。

これは超絶簡単。「いざ給へ」は「さあ、いらっしゃい」の重要語。これに念押しの終助詞「かし」がくっついただけ。答えは「さあ、こちらへおいでなさいな」の④と1秒未満で即答。


問2:文法問題(5点)

a~dの波線部の説明が正しい組合せとなっているものを選ぶ問題。

a:「限りめり」の「な」。選択肢は「断定の助動詞」or「形容動詞の活用語尾」の2択。これは品詞分解した時に「限り|な|めり」と切れる。もちろん「限り」は名詞。従って、名詞の下にくっついているのは断定の助動詞「なり」ということになる。しかし、なぜ「な」だけなのか。これは「な」と「めり」の間には撥音便無表記という現象が起きており、「なめり」と書いてあっても「なめり」と読む。音便化しなければ、断定の助動詞「なり」の連体形「なる」+推定婉曲の助動詞「めり」で「限りなるめり」となっていたものである。

b:「驚か給うて」の「れ」。選択肢は「受身の助動詞」or「自発の助動詞」の2択。「驚く」には「目覚める/ハッと気がつく」などの意味があり、その時は重要語として気をつける必要があるが、ここでは単に「びっくりする」という意味で使われている。このように心情を表す語の下についている助動詞「る」は自発となることが多い。もちろん、ここでも自発の用法である。

c:「のたまひはば」の「て」。選択肢は「完了の助動詞」or「動詞の活用語尾」の2択。完了の助動詞「つ」の未然形&連用形が「て」だが、この助動詞は連用形接続で、連用形にア段の音は存在するわけがなく、つまり「は」などというア段の音の下についている「て」が完了であるわけがない。「のたまひ|はて|ば」と品詞分解できる。重要な補助動詞「はつ」の未然形が「はて」。

d:「言ひ知ら奉り給ふ」の「せ」。選択肢は「使役の助動詞」or「尊敬の助動詞」の2択。助動詞「す」は使役or尊敬の意味を持つ。しかし、直下に他の尊敬語が来ていなければ100%使役、という基本事項からこれは使役であると判断する。なお、確かに「給ふ」は尊敬語だが、直下ではないことに注意。

というわけで、組合せが正しいのは⑤。c「て」の判断までで答えは出る。


問3:内容理解の問題(7点)

傍線部X「『心苦し』と思す」とあるが、誰が、どのように思っているか。

という設問であり、まずは主語の判断。主語の認定はさんざん練習してきたことだろう。この第2段落は、雲居雁が家出して実家に帰ったことを知った夕霧の心境が語られている。ただ、傍線部Xの直前で「姫君たち、さてはいと幼きとをぞ率ておはしにける」とあり、この箇所はリード文からも主語が雲居雁であることは明らか。しかし、その後、「見つけて喜び睦れ、あるは上を恋ひ奉りて愁へ泣き給ふを」とあるのは、邸に取り残された子どもが帰宅した夕霧を見つけて「喜び睦れ」たり、またある者は「上を恋」しく思っているのである。というのは、ご丁寧に「上」には注がついていて雲居雁のことだ示されているのだから、家出した雲居雁に連れて行ってもらえなかった子たちが主語であるのは明白。その子らをみて夕霧が「心苦し」と思っているのが傍線Xなのである。
選択肢を見ると、主語が夕霧大将になっているのは③と④のみ。というわけで①②⑤は切る。

③大将殿が、三条殿にとり残されてしまった我が子の、父の姿を見つけて喜んだり母を求めて泣いたりする様子に心を痛め、かわいそうだと思っている。
④大将殿が、置き去りにされた子の、母に連れて行かれた姉妹や弟をうらやんで泣く姿をみて、我が子の扱いに差をつける三条殿をひどいと思っている。

④の「うらやんで泣く」はあり得ない。「喜び睦れ」はどこへ行ってしまったのか?というわけで答えは③。


問4:登場人物(夕霧)の心情理解の問題(7点)

傍線部Y「もの懲りしぬべうおぼえ給ふ」の大将殿の心情の説明として正しいものを選べ。

という問題。問3と似たようなものだが、主語は最初から夕霧大将と示されている。
この段落を整理すると、

「あやしう中空なるころかな」と思ひつつ・・・やすからぬ心づくしなれ
↓〔因果関係〕
・・・もの懲りしぬべうおぼえ給ふ。

と大きくとらえることができる。ここでもまた因果関係に注目。まず、「中空なる」の注を見ると、「落葉宮には疎まれ、妻には家出されるという、身の置き所のない様」という世界一親切なことが書いてある。これだけで分かってしまうのだが、要するに何に「懲り」たのかというと、(親父がよくやっている)浮気というやつをやってみたものの、浮気相手には疎まれるわ、妻には家出されるわ、もうやってらんねーよ、と懲りているのは明白。

②三条殿には出て行かれ、落葉宮は落葉宮で傷ついているだろうと想像されて、心労ばかりがまさるため、恋のやりとりを楽しいと思っている人間の心が知れないと、嫌気がさしかけている。

が正解となる。


問5:内容理解の問題(8点)

会話文A~Cの説明として正しいものを選べ。

という問題。

①Aは大将殿の言葉で、三条殿の年がいのなさを責め、多くの子をなすほど深い仲なのに、少しの出来心ぐらいで実家に帰るなんてと非難している。Bは三条殿の言葉で、大将殿のお心が離れた自分は変わりようもなく、何をしようと勝手だ、子どもたちのことは後はよろしくと言っている。
②Aは大将殿の言葉で、子どもたちをほったらかして女御のもとに入り浸っている軽率さをたしなめ、子育ての苦労ぐらいで実家に帰る無責任さを非難している。Bは三条殿の言葉で、浮気者との間の子を育てるのに今は飽き飽きしており、子どもたちはそちらで世話してくださいと言い返している。
Aは三条殿の言葉で、年がいもなく恋にうつつを抜かして子どもたちのことを忘れていると大将殿をなじり、親のくせに無責任ではないかと非難している。Bは大将殿の言葉で、私の気持ちはもはやもとに戻りそうにないが、子どもたちだけは見捨てずにいてくれれば嬉しいと応じている。
④Bは三条殿の言葉で、大将殿に愛想を尽かされた自分であるし、今さら性格を直すつもりもない、私のことはともかく、子どもたちだけは面倒を見てほしいと言っている。Cは大将殿の言葉で、三条殿の言い分に理解を示して機嫌をとりつつも、最後には私の名誉も考えてほしいと頼んでいる
⑤Bは三条殿の言葉で、私に飽きたあなたのお気持ちがもはやもとに戻るはずもなく、お好きになさればよいが、子どもたちへの責任は負っていただきたいと言っている。Cは大将殿の言葉でで、穏やかなお返事ですねと皮肉をにじませつつ、このままでは、あなたの名折れになるだけだと反論している。

分かりやすく消せるのは②と③。
②だと、雲居雁が実家に帰ったのは子育てに疲れたからということになってしまう。笑
③は話者が違うので論外。
さて、④だが、これはC「なだらかの御答へや。言ひもていけば、誰が名か惜しき」の解釈がおかしい。雲居雁のBのセリフは「何かはとて」が分かりやすいが、明らかに怒りモード。なので、夕霧のC「なだらかの御答へや」(穏やかなお返事ですね)は皮肉に他ならない。⑤はCを皮肉と解釈しているが、残念ながらBの解釈が違う。「あなたのお気持ちがもはやもとに戻るはずもなく」と書いてあるが、これに対応する本文は「今、はた、直るべきにもあらぬを」である。Bは雲居雁のセリフなので、夕霧の気持ちについてだとすると尊敬語があるのが自然で、「今、はた、直り給ふべきにもおはせぬを」などとなっていたはずである。加えて、子どもたちへの「責任」という言い方も疑問。

というわけで答えは①。


問6:内容一致問題(8点)

①三条殿は、心変わりしてしまった大将殿に絶望して実家に帰り、おとどと語ることで、やっと「少しもの思ひ晴るけどころ」を見つけ、もはや大将殿とは暮らせないと、このまま別れる決心をした。
おとどは、三条殿のことを心配して、大将殿に「消息たびたび聞こえ」たが、大将殿は全く返事をしないので、「かたくなしう軽々しの世や」と、大将という立場にそぐわない軽薄さを不愉快に思った。
③大将殿は、三条殿の家出を知り、三条殿父娘の短気で派手な性格を考えると、「ひがひがしきこと」をしでかしかねないと驚いて、「暮らしてみづから参り給へり」と、すぐさま大殿へ迎えに行った。
④三条殿は、強気に帰宅を拒みながらも、思い切りのよい「すがすがしき御心」の大将殿ならば、ここにいる子どもたちまでも自分の手の届かない場所に連れて行ってしまいかねず、「あやふし」と危惧した。
⑤大将殿は、説得に耳を貸さない頑固な三条殿の手もとで育つことになる姫君の将来を心配して、「母君の御教へにな叶ひ給うそ」などと、せめて教訓を言い聞かせることで、父の役割を果たそうとした。

①②は「おとど」=雲居雁の父を登場させている。話題にはおとども出てくるが、実際に登場人物としては出てきていないので極めて残念な選択肢であると言わざるを得ない。
③は惜しいのだが「すぐさま」大殿へは行っていない。「暮らす」とは「暮る(=暮れる)」の他動詞形である。日が暮れる、が自動詞で、その他動詞ということは「日が暮れるのを待つ」ということになる。「暮らして」が分からなかったとしても、夕霧は妻の家出を知った後、まず自邸に帰り、その後で手紙を何度か出し、迎えの者を派遣して、結局埒があかないと判断して「暮らしてみづから参り給へり」とつながっているのである。どこが「すぐさま」やねん、という話である。
⑤は三条殿の手もとで育つ姫君を心配、とあるが、三条殿=雲居雁が機嫌を直して帰ってきたとしても姫君は三条殿の手もとで育つことになるのである。もちろん、主な養育は乳母の役目ではあるが。それに「母君のお言葉に従ってはいけませんよ」はとてもじゃないが教訓と呼べない。禁止表現「な~そ」の理解が問われる。

正解は難のない④である。


どうでしょうか?

本文はなかなか難しいですが、主語をきっちりと抑えて慎重にあらすじを捕捉すれば高得点も狙えます。

とは言え、その本文の難解さに面食らってしまうと立て直すのが難しいだろうと想像されます。

ただ『源氏物語』は有名作品ですし、あらすじや登場人物の基本情報は古典常識に含まれます。

このシーンも決してマイナーな所ではなく『あさきゆめみし』でもしっかりと描かれています。

従って最初に書いたとおり、人によっては簡単に出来てしまいます。

とは言え、平均点は下がることでしょう。

 

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