秋になりました。
他ならぬご自分のせいなのですが、あちこちに物思いの種を撒き散らした結果、お心が乱れなさることばかりで、
義父の大臣邸にはあまり足をお運びにならないものですから、
正妻の女君は光る君のことを恨めしく思い申し上げるばかりでいらっしゃいました。
六条の愛人も、なかなか心を許さなかったのをどうにか関係を結び申し上げなさってからというもの、
打って変わって、足が遠のいてしまわれたのは気の毒なことです。
しかし、関係を持つ前にはあれほど無我夢中で強引だったのに、これはいったいどうしたことでしょう。
その六条の女君は、あまりにも思い詰めなさる御性格であり、光る君とは年齢も似つかわしくなく、
この噂が漏れて誰かが聞きつけでもしたら・・・とそれを考えると、
このように光る君がめっきり訪れてくれなくなったことがますますつらくて、
寝覚めは連夜のこと、しょんぼりとあれこれ思い悩んでいらっしゃるのでした。
さて、霧がとても濃く立ち籠めている朝、光る君はそろそろ帰るようにとひどく催促されなさって、
眠たそうなご様子で嘆きつつその六条の邸宅を出て行きなさるので、
中将という女房が、女君のお部屋の御格子を一間あげて、
光る君をお見送りなさってください、と思っている様子で、御几帳を退けたので、
女君は頭を持ちあげて外を見やりなさいました。
庭の草木が様々に色づいているのを眺めつつ、
名残惜しく立ち去りがたそうにしている光る君のご様子は本当に比類ありません。
光る君が渡り廊下の方にお進みなさると、先ほどの中将の君がお見送りのためお供に参上します。
中将の君は、季節にぴったりの紫苑色の薄絹の裳を鮮やかに結んでいて、
その腰のあたりの雰囲気はしなやかで美しくございました。
光る君は振り向きなさって中将の君の手を取り、角の手すりに引き寄せて座らせなさると、
簡単には気を許さない態度といい、左右に長く垂らした額髪といい、実に素晴らしい、とご覧になるのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
さて、ちょろっと名前だけが数回出て来ていた六条の愛人がようやく本格登場しました。
ヽ(・∀・)ノ ワチョーイ♪
この物語に数多く登場する女性たちの中でも一際異彩を放ち、強烈な印象を持たせる六条御息所です。
光源氏の年上の愛人で、まだ素性は明かされていませんが、
「給ふ」と尊敬語が使われているので高貴なお方であることが読者に分かります。
今回の記述によると、最初は光源氏の求愛を拒んでいたのですが、とうとう折れたということ。
そして、光源氏は関係を持った途端にほとんど通って来なくなった、ということ。
もうここからすでに六条御息所の怨念パワーの充填が始まっているわけですね。
(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
楽しみ楽しみ。笑
その六条御息所に仕える「中将」と呼ばれる女房。
紫苑色の、折にあひたるうす物の裳、あざやかに引き結ひたる腰つき、たをやかになまめきたり。
と書かれています。
紫苑しおん色とそのまま訳しましたが、こんな感じの綺麗な紫色で、秋の色です。
紫苑という草花が秋に咲くから秋の色なんですね。
最後に光源氏がこの中将という女房を手すり(高欄)に座らせて…という記述が出てきました。
六条御息所は寝そべったままで動く気配がないのがポイントで、
光源氏は六条御息所の視界から消えた曲がり角の所で中将にちょっかいをだしているのです。笑
中将は光源氏に心を許していませんが、この続きはまた次回。
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