源氏物語~夕顔~(19)


「いつまでもあなたが何も教えてくださらないのがつらくて。私の正体も隠そうと思っていたのですが。

さあ、今度はあなたが誰なのか教えてください。もやもやして気持ちが悪い」

とおっしゃるのですが、

「名乗るほどの者ではありませんので」

と言って、それでも気を許さない様子はちょっと甘えすぎだという気がいたします。

「まあいいさ、これも私が悪いのだから」

と恨み言を言いつつも、この夕顔の女と語らいながらお過ごしになるのでした。

すると、惟光がここを突きとめて参上し、お菓子などを差し入れてきました。

光る君のことを黙っていたことで、右近が文句を言ってくるのは想像に難くないし、

やはり気の毒な気もするので、光る君の近くにはお近づき申し上げることができませんでした。

光る君がこうまでご執着なさるのも面白くて、それほどまでの器量なのだろう、と想像して、

「自分が言い寄ることもできたものを、お譲り申し上げるとは我ながら心の広いことだ」

と、とんでもないことを考えていました。

 

例えようもなく静かな夕方の空をぼんやりと眺めなさって、

奥の方は暗くて気味が悪いと女は思っているので、

縁側の簾を巻き上げてぴったりと寄り添って寝ていらっしゃいます。

夕陽に照り映えたお互いの顔を見て、

女もこのようなことになったのを予想外で奇妙な気がしつつも、

嫌なことなどはすっかり忘れて、わずかに心を許していく様子はとてもかわいらしくございました。

じっと光る君に寄り添って過ごし、何かをひどく恐がっている幼い様子に気持ちが惹かれる光る君でした。

早くに格子を下ろしなさり、灯りをともして、

「ここまで深い仲になってくださったのに、まだ心の内に秘密をお残しになっているのがつらいことです」

と恨み言をおっしゃいました。

「帝はどんなにか私を捜していらっしゃることだろう。使いの者はどこを尋ね歩いているだろうか」

と想像なさると、また一方では、

「我ながら奇妙な心だ。六条のあの人も、どんなに思い悩んでいらっしゃるだろう。

あの方に恨まれるのは当然のことだが、心苦しいことだ」

と、気の毒な六条の愛人のことを思い申し上げなさいました。

何の気兼ねもなくこの女と一緒にいることにしみじみと幸せをお感じになると同時に、

「あの六条の方も、見ていて苦しいほどの思慮深さをこんな風に少し気楽にしたいものだな」

と、何気なく比べたりなさっておりました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


今回、けっこう苦労しました。汗

ということでもう何かをグダグダ書く気力もありません。笑

ただ、ひとつ。

次回からいよいよあの名場面に突入します!

楽しみですね♪

 

<<戻る   進む>>

 

Posted in 古文

コメントは受け付けていません。