源氏物語~夕顔~(31)


大徳たちも、光る君だとは知らずに、並々ならぬ縁があるのだろうと思って皆涙を落としていました。

右近には、

「さあ、二条院へ帰りましょう」

とおっしゃいましたが、

「長い間、幼い頃から片時もお側を離れずにお仕えしてきた方と、あまりに唐突にお別れすることとなって、

私はいったいどこへ帰れば良いのでしょう。

この顛末を、五条で待つ他の女房たちにどう話せば良いのでしょう。

悲しいのはもちろんですが、それはそれとして、皆に大騒ぎされるのが非常につらく思われるのです」

といって泣き惑い、

「火葬の煙と一緒に、私もあの世へお供したい・・・」

「そう思うのはもっともだが、世の中とはこういうものなのだ。悲しくない別れなどというものはない。

どんな命もいつかは潰えるものだ。どうにか気持ちを慰めて、今後は私を頼りにしなさい」

とおっしゃり、なだめてはみたものの、

「かくいう私も生きていられない心地がするよ」

とおっしゃるのは、何とも頼りがいのないことです。

惟光が、

「夜明けが迫ってきたようです。早くお戻りにならないと」

と申し上げると、悲しみで胸がいっぱいになり、

後ろ髪を引かれる思いで振り返り振り返りしつつ、そこを出なさいました。

道にはたくさん露が降りており、更に朝霧まで立ちこめて、どこへともなくさまようような心地がなさるのでした。

夕顔の女が生前の姿のまま横たわっていた様子や、

夜に互いに掛け合っていた着物で、自分の紅の上着を女君に着せていたのがそのままだったことなど、

自分とあの女とはいったいどのような宿命だったのだろうか、と道すがらお思いになっていました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


夕顔との最後の対面を終え帰途につく光源氏です。

特に補足する事項はありません。

ということで今回はあっさりと終わります。

 

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