源氏物語~夕顔~(32)


傷心のあまり、御馬にもしっかりとお乗りになれないご様子なので、

惟光が介添えしながら二条院へとお帰りになる途中、鴨川の土手のあたりで馬を下り、

お心の激しい乱れのために、

「こんな道でさまよいながらどこかへ消えてしまうのではないだろうか。二条院には絶対に戻れない気がしてきた」

とおっしゃると、惟光も、

「私がしっかりしていれば。

あの時、夕顔の亡骸を一目見たいとおっしゃっても、このような道にお連れ申し上げるべきではなかった」

そう思うと、落ち着かないので、川の水で手を洗い、清水寺の観音様に救いを求めてお祈りしましたが、

それでも、どうしようもなく心が乱れておりました。

光る君も、無理に心を奮い立たせて心の中で御仏を祈念なさると、

また惟光に助けられながら、どうにか二条院へお帰りになりました。

奇妙な深夜の外出を、二条院の女房たちは、

「みっともないことですわ」

「最近の光る君様は、いつも以上に落ち着きないお忍びのお出かけが頻繁でしたが、

昨日のご様子はすごく苦しそうでいらっしゃったわ」

「どうしてこんな風にうろうろと歩き回っていらっしゃるのでしょう」

と嘆いておりました。

床に伏しなさったまま、本当にとてもひどく苦しみなさって二、三日が過ぎ、ひどく弱ってしまわれました。

帝もそのことをお聞きになると、この上なくお嘆きになりました。

祭り、祓、修法など、言い尽くせないほどの加持祈祷があちこちで絶え間なく行われています。

佳人薄命という語もある通り、世にまたとなく、神秘的なほど美しいお姿なので、

この世に長くはいらっしゃることができない宿命なのだろうか、と世の人は騒いでおりました。

苦しいながらも右近をお呼び寄せになって、ご自分の居室の近くに部屋をお与えになり、仕えさせなさいます。

惟光は光る君のご容態を思うとで気が気でないのですが、

何とか気持ちを落ち着けて頼るものがない不憫な右近をあれこれ助けつつ二条院に仕えさせます。

光る君は少しお加減がよい時には右近を呼び出して用を言いつけたりなさるので、

すぐに他の女房たちと親しくなりました。

濃い墨染めの喪服を身にまとい、容貌が良いとは言えませんが、見苦しくもない若い女でした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


無事に自邸へと帰還した光源氏です。

凄まじい傷心と衰弱ぶりです。

さ、今回も特別な補足は必要ないでしょう。

ということで、また次回!

 

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