枕草子~にくきもの~(1)


にくし」は、不快・嫌悪の感情を表す場合にしばしば用いられるが、気に入らない、嫌だという程度の反発の感情を表す語で、現代語の「にくい」のような強い憎悪の感情は含まれない。また、「にくくあらず」「にくからず」のように否定の形で用いられたときには、むしろ、好ましい意を表すことが多い。
詳説古語辞典(三省堂)

ウザい、ムカつく、というニュアンスに近かったようですね。

清少納言が「ウザい!」と感じていたものは何だったのでしょう。


【現代語訳?】

ウザいこと。

急いでるときにやってきて長話をし始めるやつ。テキトーにあしらえる人なら「後にして」なんて追い払えるけど、身分のある人だとそうもいかないからスーパーウザいしむかつくわ。
それから、硯に髪の毛が入って擦っちゃった時ね。あと、墨の中に石が入っていて、擦ってるとキシキシ音がするやつ。

急病人がいて、強い法力を持つ僧を連れて来ようというときに、いつもの所にいなくて探し回っていてめっちゃ待ち遠しい中、ようやくやって来て、喜んで加持祈祷させると、怨霊のお払いが続いて疲れたのか、座った途端いきなり眠そうな声を出すの、あれマジむかつくブッ飛ばす。

しょうもない人のくせに、ニヤついてべらべら喋っているの。火鉢や囲炉裏で手の甲をひっくり返しひっくり返しして、シワをのばしながらあぶってるやつはもう年寄りじみてイヤ。若者はそういうことはしないわ。老けた連中だけが火鉢のへりに足まで持ちあげて、喋りながら足をこすり当てたりするのよ。そういうやつって、人の近くにやって来て座る時に、その座る場所を扇でバタバタ仰ぎまくって塵を払いのけたりしちゃってさ、「は?あたしにホコリかかったし、てか目に入ったらどうすんの?」って感じ。こういうイケてないやつって、落ち着いて座ってもいられなくてふらふら立ち上がってみたり、前に垂らすべき狩衣の前垂れを巻き込んで座ったりするんでしょ、どうせ。こんなダサいことするのは、どうしようもない身分の低いやつよね、なんて思ってると、そこそこの身分の式部の大夫なんかがしていてガッカリだったわ。

それから、酒を飲んでわめき散らし、口のまわりをいじり、髭があるやつはその髭を撫でたりしつつ盃を人に取らせる時の様子がめっちゃめちゃウザく見えるの。「もっと飲め」とか言うみたいで、身震いをして、頭を振って、口元をだらしなくゆがめて、まるで小さい子が『こふ殿に参りて』なんかを歌うみたいにしてるのなんか、もはやキモい。それもね、マジかっていう身分の高い人がなさってたのを見たことがあったから、ますます気に入らないと思ったの。


ちゃんと訳す気がないみたいです。笑

むかつくのは男が多いんですかね、清少納言ちゃん。

火鉢のヘリに足をもちあげて・・・なんていうのは見るに堪えないでしょうね、確かに。

こんなのもさすがに女の人がするわけがないので、男の話です。

酔っ払いの件もそうですね。

 

急いでる時に来るお客さんてのも頷けますね。

付け加えるなら、お腹が空いている時にされる長話は堪えられないですね。

「お腹が空いているとスイッチが切れて全部どーでもよくなる」

みたいなのはO型の特徴として本に書かれていたのを見たことがあります。笑

流行りましたよね、これ。

歯医者さんの待ち時間に読んだなー。

 

さて、続きは近いうちに。


【原文】

にくきもの。いそぐことある折に来て長言するまらうど。あなづりやすき人ならば、「後に」とてもやりつべけれど、さすがに心はづかしき人、いとにくくむつかし。硯に髪の入りてすられたる。また、墨の中に石のきしきしときしみ鳴りたる。

にはかにわづらふ人のあるに、験者もとむるに、例ある所にはなくて、ほかに尋ねありくほど、いと待ち遠に久しきに、からうして待ちつけて、よろこびながら加持せさするに、このごろ物の怪にあづかりて、困じにけるにや、ゐるままにすなはちねぶり声なる、いとにくし。

なでふことなき人の、笑がちにてものいたういひたる。火桶の火、炭櫃などに、手のうらうち返しうち返し、おしのべなどしてあぶりをる者。いつか若やかなる人など、さはしたりし。老いばみたる者こそ、火桶のはたに足をさへもたげて、ものいふままにおしすりなどはすらめ。さやうの者は、人のもとに来て、ゐむとする所を、まづ扇してこなたかなたあふぎ散らして、塵掃き捨て、ゐも定まらずひろめきて、狩衣の前まき入れてもゐるべし。かかることは、いふかひなき者の際にやと思へど、少しよろしき者の式部の大夫などいひしがせしなり。

また、酒飲みてあめき、口をさぐり、ひげある者はそれをなで、さかづきこと人にとらするほどのけしき、いみじうにくしと見ゆ。「また飲め」といふなるべし、身ぶるひをし、頭ふり、口わきをさへひき垂れて、わらはべの「こふ殿に参りて」などうたふやうにする。それはしも、まことによき人のし給ひしを見しかば、心づきなしと思ふなり。

 

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