利発な命婦は、それほど名手というわけでもないのをあまり長くは聴かせまいと思ったので、
「曇りがちなようですね。そういえば、今夜は客人が私を訪ねて来ると言っておりました。
そろそろ戻りますね、客人を避けているように思われては困りますから。
また後日ゆっくりとお聴かせください。さ、格子を下ろして差し上げましょう」
といって、そんなには琴を弾かせずに帰ったので、
「中途半端なところでやめたものだな。まだその技量を見極めていないのに。くそっ」
とおっしゃった様子は、たいそう興味深くおもっていらっしゃるようでした。
「せっかくだからもっと近くで立ち聞きさせなさい」
とおっしゃったのですが、興味を持っているところでとめておきたいと思ったので、
「いやいや、たいそう心細い様子で、心が消えるほどに深く思い込んで心苦しそうにしていらっしゃるので、
お引き合わせするのは心配です」
と申し上げると、
「それもそうだ。私も姫君も、いきなり馴れ馴れしく語らうような身分ではないのだから」としみじみお思いになって、
「私の気持ちをほのめかしてそれとなく伝えよ」
とお命じになって、他にお約束している女性がいたのでしょうか、たいそう密やかにお帰りになりました。
「上様が、光る君様のことを真面目でいらっしゃるとお悩みになっているのがおかしく思われることがあります。
お忍びであちこちお出かけになるこんな姿を御覧になったことはないのでしょうからね」
と申し上げると、引き返してきて、笑いながら、
「他の人みたいに私の罪を言いふらしてはいけないよ。私のことを浮気な振る舞いだと言うなら、お前だって」
とおっしゃいました。
命婦は光る君が時折このように自分のことを好色だとおっしゃるのを気恥ずかしく思って何も言いません。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
久しぶりの更新となってしまいました。
色々と忙しくてですね~。
今回は特に余計な解説も必要ないし、長くなったのであっさり終わります。
ではまた。
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