「で、その娘というのは?」
と光る君がお尋ねになります。
「容貌も気立てもなかなかのものです。代々の播磨の国司が思いを掛けて求婚の意志を見せたのですが、
入道はまったく受け入れず、
『我が身がこのように落ちぶれてしまった以上、もうこの娘一人のことしか望みはないのだ。
この娘にかける思いは格別である。
もし、私が死んだ後、その志がとげられず、思い通りにならない前世からの因縁だったならば、
娘よ、海に身を捨てなさい』
と、日頃から遺言をしているそうです」
と申し上げるお話を、光る君は面白がって聞いていらっしゃいます。
「海竜王の后にでもなるのだろう。随分な箱入り娘のようだ」
「理想が高いことよ、やっかいだなあ」
などと人々は笑うのでした。
この明石の入道と娘の話をした男は、播磨の守の子で、今年になって六位蔵人から五位に昇進した者でした。
「この男は大の女好きだから、その入道の遺言を破ってやろうと思っているんだろうよ」
「ああ、きっとそういうつもりでうろついているに違いない」
などと言い合いつつ、一方で、
「いやまあ、そうはいっても田舎者はなあ」
「小さい頃からそんな所で育って、古風な親に従っているだけの者では」
「母親の方は由緒があるのだろう」
「良い女房や女の子などを、つてをたどって京の良い家柄から迎え入れ、
まばゆいばかりに大事に育てているそうだ」
「大事な娘が風情のない人間に育っていったら安心して置いておけないだろうからなあ」
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
明石ちゃんのお話で盛り上がっております。
明石ちゃんは一番のお気に入りなので、もしもAKB48が『源氏物語』をやったら・・・
もちろん松原夏海ちゃんだと思ってました。
※卒業公演における天使ちゃん。
もうね、現時点ではAKBとか興味ないんですけどね。笑
それに『源氏物語』が訳し終わる頃にはAKBってどうなってんだ?笑
しかしですね、この明石の君の何とも言えない切なさがとまらない感じ、
夏海ちゃんが演じるとバッチリなんですよね、絶対。
そうそう、最後のセリフの箇所、本文が複雑で困りました。
岩波文庫を元に訳しているのですが、そこには、
なさけなき人になり、ゆかば、さて心安くてしも、え置きたらじをや。
と書いてあり、ご丁寧に「なさけなき人」になるのは国司で、「ゆかば」は播磨国に行くのだ、と注がついています。
意味が分からぬ!
主語が国司ならば、なさけなき人「に」なり、の「に」が邪魔。
実はこの「に」については諸本で扱いがまちまちらしいんですね。
「なり」の下に「て」がある本文もあるのだとか。
本文は岩波に従い、岩波の注は無視して、主語を明石の君にしました。
そして「なり」の下の「、」はないものとして、「なりゆかば」とひとまとまりにし、「なってゆくならば」としました。
これは与謝野晶子と同じ解釈です。
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