1つ前の記事で、《HEIAN ~ 恋のラプソディー ~》誕生までの流れを書きました。
では、完成した物語の流れを具体的に振り返っていきます。
M1《さくらさくら》
イントロダクション。音楽の途中から団員Mさんの渋い声で「今は昔…」とナレーションがかぶさってきます。ナレーションと演奏が終了すると、突如大きな雷鳴が鳴り響き、姿を現した平安貴族・藤原駄仁得留(ふじわらのだにえる)。
混乱しながらステージ中央へやって来ると、通りすがりの女子大生・なつみが驚きながら声を掛けます。
※なつみ役(稲葉美優ちゃん)と駄仁得留(まろ)。本番前のリハーサル室にて。
駄「ここがいづこで、今がいつなのか教えてはくれぬか?」
な「平成28年の9月11日よ。で、ここは横浜の青葉区」
駄「平成?何じゃ、その元号は。確か寛治六年だったはずだが…」
な「寛治六年て…(スマホで検索)え!今から900年以上も前じゃ!」
駄「何?!」
な「ひょっとして、タイムスリップ?」
900年後の世界に来てしまったことを知り、激しく動揺する駄仁得留でしたが、ふと女の美しさに気づき、和歌を詠みかけるのでした。
みちのくのしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに
〔みちのくで作られる「しのぶもじずり」の乱れ模様のように私の心が乱れてしまったのが、あなたのせいでないとしたら、他の誰のせいだというのでしょう〕
M2《ヘビーローテーション》
駄仁得留の恋心はAKB48の元気なこの曲。《さくらさくら》は本で言えば「前書き」に相当するもので、本編は明るく楽しく元気よくここから始まります。「ポップコーンが弾けるように『好き』という文字が躍る♪」ってなわけです。
和歌を渡されたなつみでしたが、さっぱり意味が分かりません。そこで歌の意味を解説してみたものの、現代では和歌がすっかり廃れてしまったことに衝撃を受けた駄仁得留は、改めて900年という時の流れを実感し、その心境をやはり和歌にしたためます。なつみはそれを横目に見ながら、
な「900年隔たってても同じ日本人なのよね、やっぱ。まるで異邦人みたいだけど」
M3《異邦人》
久保田早紀のヒット曲ですが、「過去からの旅人を呼んでる道」という歌詞が今回の物語にピッタリ。この曲を提案してくれたのは実行委員のN氏、まいど。
なつみにせかされる格好で、さっき詠んでいた和歌を披露する駄仁得留。
世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ
〔この世の中は夢なのだろうか、はたまた現実なのだろうか、私には分からなくなってしまったよ。世の中なんて本当に実在するのかどうか怪しい、あってないようなものだから〕
和歌が廃れた現代において、男と女はどうやって恋をするのか尋ねる駄仁得留に、学校やバイト、合コンなどで出会ったあとデートをして、、、と教えているうちに、なつみは駄仁得留をディズニーに連れて行く悪戯を思いつきます。
M4《ディズニーメドレー》
※この曲の途中、「いつか王子様が」のテナーサックスソロを駄仁得留が吹きます。
な「ねえねえ、ダニーちゃん!なーんでサックスなんか吹けるの?」
駄「貴族のたしなみといったら、漢詩に和歌にサックスよ」
急にラブラブになった2人。なつみはここから駄仁得留のことを「ダニーちゃん」と呼ぶようになります。サックスを吹いたのは良かったのですが、平安の都では牛車にしか乗ったことがない駄仁得留は、ジェットコースター(ビッグサンダーマウンテン)1つでギブアップ。おかげでサッサとディズニーを出ることになってしまいました。
な「おかげでまだこんな時間。そうだ、銀座でお買い物したいんだけど、いい?」
ということで、銀座へショッピングに出かけることになりました。…と、その前に、900年前とのあまりの違いに驚愕した心境を歌に詠む駄仁得留。
松風も岸うつ波ももろともに昔にあらぬ音のするかな
〔松に吹きつける風も岸を打つ波も、昔とはまったく違う音がすることだなあ〕
そして銀座へ。
M5《銀座カンカン娘》
高峰秀子が歌ってヒットした曲ですが、今回は松田聖子&福山雅治バージョンを元にしたアレンジでお届けしました。この曲が吹奏楽のコンサートで演奏されることはほとんどないと思います。この曲はゲストに迎えたジャズ・シンガーの山本圭美(まみ)さんに歌っていただきました!素敵すぎる…(●´ω`●)
さて、すっかり日も暮れ、ふと空を見上げるとまん丸の綺麗な月が出ています。
な「ねえ、そんなことより見て、綺麗なお月様」
駄「おお。本当にのぅ。月の美しさは900年たっても変わらぬか。では一首」
いつとても月見ぬ秋はなきものをわきて今夜のめづらしきかな
〔秋ならいつだって月を見るものだけれど、十五夜の今夜の月はとりわけ素晴らしいなあ〕
な「ふーん、何となく素敵な歌ね。まあ…今夜は十五夜じゃないですけどね」
駄「細かいことを言うでない」
M6《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》
ジャズのスタンダードナンバーで、月を歌った曲の中でもとりわけ有名です。日本ではアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングに起用され、この手の音楽に親しみのない層にも広く知られることになりました。色んな演奏がありますが、今回はドリス・デイのバージョンを元にアレンジしたものを演奏しました。前曲に引き続き、まみさんの素敵な歌をお届けしました♪
な「もうこんな時間か。終電ももうすぐね。でも、なーんか帰りたくないなぁ、今夜は」
駄「お?おお。まろもだ」
な「ダニーちゃん」
梓弓引けばもとすゑ我が方によるこそまされ恋の心は
〔梓弓を、力を込めて引っ張るとその両端が自分の方に寄ってくる、その『寄る』ではなく、『夜』にこそ恋の心はますます燃え上がるものだ〕
駄「恋は夜にこそ激しく燃えるものよ」
M7《ナイト・バーズ》
Shakatak(シャカタク)というイギリスのフュージョンバンドの代表作です。カッコイイ曲で、大人の夜という印象です。
これからどうする?と話している2人でしたが、突然遠くで雷が鳴り響き、月も見えなくなってしまいました。空模様の急変に驚くなつみでしたが、駄仁得留には分かるのでした。
な「何?何か知ってるの?」
駄「実はこの時代に来るときも同じだったのじゃ。晴れていた空が急変して」
そう、別れの時が迫っていたのです。
駄「この曲をそなたに送ろう。しばしの別れだ」
再開の約束をかわした駄仁得留は、姿を消す前になつみのために1曲演奏します。
M8《アンチェインド・メロディー》
古いアメリカン・ポップスで、色々なアーティストが歌っていますが、何と言っても1965年に発表されたライチャス・ブラザーズのものが決定版でしょう。1990年に公開された映画《ゴースト~ニューヨークの幻~》で主題歌に使われ、リバイバルヒットしました。恋人への愛と再会を誓った名曲です。この曲はどうしてもやらせて欲しい、と頼んで入れてもらいました。
別れ際、一首の和歌をなつみに手渡し、平安時代へと帰ってしまった駄仁得留。
忘るなよほどは雲居になりぬとも空ゆく月のめぐり逢ふまで
〔私のことを忘れないでくださいね。どんなに遠くに離れてしまっても、空をゆく月が沈んでもまた空にのぼるように、ふたたび巡り逢う時がきっと来る、その日まで〕
な「何なのよ。勝手にやってきてさんざん振り回して勝手に帰っちゃって…。でも…また会えるのよね?約束よね?」
M9《異邦人》
エンディングバージョンです。M3で演奏したものを短くし、まみさんに歌っていただきました。
本編はこれで終了です!
アンコールは2曲。
A1《恋のカーニバル》
A2《見上げてごらん夜の星を》
を演奏しました。
終演後、まみさん・美優ちゃんと3人で記念撮影をお願いしました。
しかし、自分で言うのも何ですが(ちゃんと言ってませんでしたが脚本は僕が書きました)、ストーリー・楽曲・和歌の3つがすべて完璧に融合したと思います。
まるでこれらの名曲は全てこの音楽劇の誕生を待っていたのではないかと勘違いするほどに。笑
(ヾノ・∀・`)ナイナイ
1000年前の歌人達はこの音楽劇のために名歌を残してくれたのではないかと勘違いするほどに。笑
(ヾノ・∀・`)チガウチガウ
あ、ディズニーメドレーのソロを吹くとき、ディズニーのサングラスを掛けたのですが(美優ちゃんのアイデア!)上の画像だと、角度的にそれほどおかしくないですが、正面から見るとかなり異様で面白いですwww
以上、定演第2部の振り返りでしたー。
明日はまたちょっと違う角度からUPしたいと思います。
ではまた明日。