徒然草~はじめて物語~


私が八歳になった年、父に尋ねてこう言った。

「仏とはどのようなものでしょうか」と。

父が答えて言うには、

「仏になるのは人間だよ」と。

また私が尋ねた。

「人はどうやって仏になるのでしょうか」。

父はまた、

「仏の教えによって成仏するのだ」と答えた。

また尋ねて、

「教えてくださる仏は、誰が教えたのですか」と。

また答えて、

「それもまた、先輩の仏の教えによって成仏なさったのだ」と。

また尋ねて、

「その、最初に教えを授けた第一の仏は、どういう仏なのでしょうか」と言ったとき、父は、

「空から降ってきたのだろうか、はたまた大地から湧き出たのだろうか」と言って笑った。

「こうして父は問い詰められて答えられなくなりました」

と、私は色んな人に語って面白がったものだ。


『徒然草』が「つれづれなるままに~」で始まることは広く知られています。

しかし、『徒然草』の最後はあまり知られていないですよね。

実は、上記の話が『徒然草』の最終章段である第243段です。

最初にやったのは誰?っていうのは面白い話題だと思います。

・初めてナマコを食べたの誰?

・初めてバンジージャンプやったの誰?

とかね。

また、ハイヒールはウンコを踏まないために作られた、という起源説は有名ですが、どうも信憑性はないらしいです。

少年期の兼好は、一番最初の仏はどうやって誕生したのだ、という疑問を持ったという話です。

仏の道に入って、『徒然草』の中でも、出家を勧めるような文を度々書いている兼好が、こういう話を書いているというのは興味深いことです。

仏の存在に懐疑の念を抱いており、しかもそれを書いてしまうという。

少年期のことだと言ってはいますが、語る価値のないものだと考えていたなら書かないですよね。

そんな半信半疑で兼好は成仏して極楽に往生できたのでしょうか。笑

それはさておき。

宇宙の起源というのは、およそ137億年前のビッグバンだと言われています。

ホントかよ、と思いつつ、ホントだったとして、大爆発ビッグバンが起こる前、そこには何があったの?

そもそも、「そこ」って何?どこ?

その場所はいつできたの?その場所ができる前は何があったの?

最初の物質って何?いつできたの?どうやってできたの?

時間っていつ始まったの?

・・・・・・笑。

時間って、人間が作り出した概念で、物事を捉えたり整理したりする上でも、生活する上でも不可欠なものとなっていますが、自然界に時間なんて存在していないんでしょうね。

ってずっと思ってる。


八つになりし年、父に問ひていはく、「仏はいかなるものにか候ふらん」と言ふ。

父がいはく、「仏には人のなりたるなり」と。

また問ふ、「人は何として仏にはなり候ふやらん」と。

父また、「仏の教へによりてなるなり」と答ふ。

また問ふ、「教へ候ひける仏をば、なにが教へ候ひける」と。

また答ふ、「それもまた、さきの仏の教へによりてなり給ふなり」と。

また問ふ、「その教へはじめ候ひける第一の仏は、いかなる仏にか候ひける」と言ふ時、

父、「空よりや降りけん、土よりや湧きけん」と言ひて笑ふ。

「問ひつめられて、え答へずなり侍りつ」と、諸人に語りて興じき。

 

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