源氏物語~葵~(7)


源氏物語-葵-

左大臣家は、本祭の見物はなさいません。

光る大将の君は、例の御禊における御車の場所取り争いのことをご報告する人がいたので、「非常に申し訳なく、気の毒なことだ。それにしても情けない」とお思いになり、「我が妻にはやはり残念な所がある。重々しい家柄でいらっしゃるのだが、物事に対する情に欠け、あまりにも無愛想で、正妻と愛人という間柄では情けを交わすべきものだ、というお考えにはいたらないのに感化されたお付きの人が、下々の者たちに乱暴をさせたのだろうよ。妻自身はそんな乱暴は望んでいなかったのだろうが。斎宮の母御息所は気立ても非常に立派だし、奥ゆかしくていらっしゃる方なのに。どんなにか傷つきなさっただろう」と気の毒にお思いになって、御息所のお屋敷をお訪ねになったのですが、娘の斎宮がまだいらっしゃったので、神事の憚りにかこつけてお会いになりませんでした。

当たり前か、とお思いになりつつ、「どうしてだろう。お互い様ではあるが、こんなによそよそしくしないでほしいものだよ」とつぶやかずにはいられない光る君でした。

葵祭の日、光る君は二条院にいらっしゃり、見物にお出かけなさいます。

お出かけの前に、西の対にお出でになり、惟光に車の準備を仰せつけました。

「女房たちも出かけますか」とおっしゃると、たいそう可愛いらしくおめかししていらっしゃる紫の姫君を、にっこりと微笑みながら御覧になっています。

「さあ、姫君は私と一緒に見るのですよ。いらっしゃい」

というと、御髪がいつも以上に美しくお見えになるのをかき撫でなさりながら、

「しばらく御髪を切り揃えていませんでしたね。今日はお切りになるのに良い日ですよ」

といって、暦博士をお呼びになり、良い時間をお尋ねになる時に、

「先に女房が出かけなさい」

と、かわいらしい姿の童女たちをご覧になりました。

とても美しく切り揃えた髪の裾が浮紋の袴にかかっている様子は鮮やかに見えます。

「あなたの御髪は私が切りましょう。それにしても厄介なほど髪が多いですね。成長したらどんな風になるのだろう」

と手間取りながら髪を切り揃えなさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


久しぶりの更新となりました。

いよいよ葵祭の本祭が近づいてきました。

左大臣家は出かけないことにしたようですが、元々行くつもりがなかったのか、事件を起こしてしまったからなのか、はっきりとは書かれていませんが、おそらく後者でしょう。

事件のあらましを聞いた光源氏は六条御息所のもとへ謝罪に行きましたが門前払いを食らってしまいます。

そして紫の君とお出かけの準備をしているわけですが、当時は髪を切るのにも日にちの吉凶があったようです。

なんと窮屈な。笑

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