二月の十日過ぎのこと、紫宸殿で桜の宴が催されました。藤壺中宮と春宮の御座所は玉座を挟んで左右に設けられています。
弘徽殿の女御は、藤壺中宮がこのように権勢を誇っていらっしゃるのを、折あるごとに苦々しく思っていらしたのですが、この日の桜の宴はお見過ごしになることができずに参上なさいました。
たいそうよく晴れて、空の様子も鳥の声も気分よさげであるのに、親王たちや上臈をはじめとして、その道に通じている人々は、割り当てられた題に従って漢詩をお作りになります。
光る君は、
「『春』という文字をお題に頂戴しました」
とおっしゃる声さえも、他の人とは違う高貴な響きがありました。
次は頭の中将ですが、光る君の後ということで、人がどう見るだろうかと考えると、平常心でいられるはずもないようでしたが、たいそう感じがよく、落ち着いた雰囲気で、発声なども威厳があって立派でした。
このお二方以外は、みなお題に対して気後れがちに戸惑う方ばかりでした。
まして、低い身分の官人たちは、帝や春宮の学問が立派で優れていらっしゃり、この漢詩のような方面において並々ではない人が多くいらっしゃる時代だったのできまりが悪く、晴れ渡って雲一つない空の下、広々としたお庭に進み出ることは気が引けて、題を賜るのは簡単なことなのですが、心苦しそうでした。
醜く不格好な老博士たちが物馴れた様子なのもしみじみとした感じがします。
このように、同じ題を賜るということについても様々であるのを、帝は面白いものだと御覧になっているのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。
さて、第八巻「花宴」スタートです。
改めて系図を載せておきましょう。
この巻は短いのですがちょっと、いや、かなりやばい事件が起こります。
お楽しみにー。
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