頭の中将は笑ってしまいそうになるのを堪えて、光る君が広げなさった屏風に近寄ると、わざと大袈裟にガタガタと音を立てながら畳んで片付け、動揺させました。
典侍は歳を取ってはいましたが、ひどく艶やかでなよなよと女らしく、以前にもこのように男の心を動かすことがしばしばあったので、動揺しつつも、「光る君をどうするつもりだろうか」と心配して、震える手でさっと男の着物を掴みました。
光る君は、素性を知られずにここを出なければ、とお思いになりましたが、冠などもずれただらしない恰好のまま逃げて行く後ろ姿を想像すると、ひどく愚かに思えて躊躇していらっしゃいます。
頭の中将は、自分だと知られないように黙っています。
ただ非常に怒っているように振る舞って太刀を引き抜くので、典侍が、
「あなた、あなた!」
と手を擦って懇願してくるので、頭の中将は思わず笑ってしまいそうでした。
この典侍は、若作りをして色っぽく振る舞っているからこそそれなりに見えていましたが、実は五十七、八歳で、そんな年増の女が、油断して恋の物思いに乱れている様子、二十歳前後の立派な貴公子に挟まれて怯えている様子は、たいそう不似合いでみっともないと言わざるを得ません。
頭の中将が別人であるように振る舞って恐ろしい雰囲気を作っていましたが、やりすぎたせいでかえって光る君に見破られ、「自分だと知っていてわざとこんな風にするのだな」と馬鹿馬鹿しくなりました。
相手の男が頭の中将だとお分かりになるとたいそうおかしくなって、太刀を抜いた腕を掴んで強くつねりなさったので、「見破られたか」と癪に障ったものの、堪えられずに吹き出してしまいしました。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
「ちょっと待って、典侍が年配だっていうのは前々から書かれてましたけど、57歳?!」
と思った方、いらっしゃるかと思います。
この時、光源氏の年齢は19歳とされています。
2017年の時点でこの関係を芸能人に例えるとだいたいこんな感じかしら?
中川大志君@光源氏/浅野ゆう子さん@源典侍。
だいたいですけど、年齢差はこんな感じになるようです。
物語の設定と同じくらいの年齢で美魔女、っていうと浅野ゆう子さんかなー、って。
言っときますけど、個人的には浅野ゆう子さん好きですし、全然ディスってませんからね!
でも本文での書かれ方は酷いかも・・・。浅野ゆう子さん、ごめんなさい。
さて。
頭の中将の企みは途中で失敗してしまいましたとさ。
では続きをお楽しみに。
<<戻る 進む>>