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源氏物語~賢木~(16)

気品があっていかにもご立派でいらっしゃる様子も、紫の姫君と見分けることが難しいのを、やはり昔からこの上なく執着してきたせいであろうか、
「格別、ますますお美しく成長なさったなあ」と、比較するものもないように思われなさって心が乱れ、そっと御帳の内に忍び込んで、お召し物の裾を引っ張りなさいました。
たきしめたお香のかおりがさっと匂い立ち、その気配から光る君であることがはっきりと分かったので、驚きあきれるとともに忌々しくお思いになられて、すぐに突っ伏しておしまいになりました。
「せめて振り向いてくださるだけでも」とじれったくて引き寄せなさると、中宮様はお召し物を脱いでお逃げになろうとしたのですが、思いがけず御髪をつかまれてしまったので、とても辛くて、前世からの深い因縁を身にしみてお感じになり、非常に胸が苦しくお思いになるのでした。
光る君も、長らく恋慕の情を抑えてきたはずのお心がすっかり乱れて、まるで正気を失ったように、様々な恨み言を泣きながら申し上げなさるのですが、「本当に不愉快だわ」とお思いになってお返事もなさいません。
ただ、
「とても具合が悪いので。具合の良い時があればお話し申し上げましょう」
とおっしゃるのですが、光る君は尽きることのない思いのたけを話し続けなさいます。
さすがに、素晴らしいとお聞きになるような点も多少はあったのでしょう。
以前に過ちを犯してしまった仲ではあったのですが、またしてもこのようなことをされたのはとても悔しく思われ、心惹かれるものの、上手に逃れなさって、その夜も明けていきます。
このうえ強引に逆らい続けるのも畏れ多く、気圧されるほど立派なご様子なので、
「ただ、この程度でも時々お会いできましたら。大変な愁えを少しでも晴らすことさえできましたら。他には何も畏れ多いことは考えておりません」
などとおっしゃるのは、油断させ申し上げようという心づもりなのでしょう。
ありふれた恋人どうしでさえも、しみじみとした感情が起こりがちなのですから、ましてお二人はこの世にまたとないほどでしょう。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。

光源氏、やはり危険な輩です。
しかし、そこはさすがに藤壺さま、同じ過ちは繰り返さないのでした。
゚+(o’д’)b+゚ ブラボー!!
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