源氏物語~夕顔~(27)


二条院に仕える人々は、

「どちらに行っていらしたのですか」

「苦しそうにお見えになりますがどうなさったのですか」

などと声をお掛けしましたが、光る君は何とも返事をなさらず、

御帳台の内にお入りになり、胸を押さえて色々考えると、あまりにも悲しみが大きくて、

「なぜ車に乗り合わせて行かなかったのだろう。もし生き返ったとして、私がそばにいなければどう思うだろうか。

見捨てて立ち去ったのだと、私のことを薄情な人間だと思うのではないだろうか」

と、狼狽しながらも夕顔のことをお思いになると、胸がお詰まりになるのでした。

頭痛も酷く、熱があるような気がしてとても苦しいので、動揺なさって、

「こうしてあっけなく私も死んでしまうのかもしれない」とまでお思いになっておりました。

日が高くなっても起き上がらずに臥せっていらっしゃるので、

人々は奇妙に思って、お粥などを召し上がるよう促しましたが、苦しさと心労とで食事どころではありません。

そこに、内裏からのお使いがやってきました。

昨日、光る君を尋ね当てることができなかったことで、帝が心配していらっしゃるのでした。

義父の大臣家の御子息も参上なさったのですが、光る君は頭の中将だけを、

「立ったまま、こちらへお入りください」

と部屋へ招き入れなさり、御簾を隔てたままお話しになります。

「今年の五月ごろから重い病に倒れていた私の乳母が、

仏門に入って戒を授かった御利益か、持ち直していたのですが、
近ごろまた具合が悪くなり、弱くなってしまったのです。

もう一度会いに来ておくれ、と私に言うものですから、

幼い頃からいつも側にいてくれた人の最期に立ち会わないでは、薄情者だと思われるだろうというわけで、

見舞いに伺っていたのですが、その家の召使いが病気を患って里下がりもしないまま急死したのを、

客人の私に遠慮して、日が沈んでから遺体を外へ運び出したということを、後になってから聞きまして、

神事が色々とあるころだから、死の穢れに触れた私が内裏に出仕するのは非常にまずいだろう、

と恐縮して参上できずにいたのです。

今朝方から、風邪でしょうか、咳と頭痛が酷くて苦しいものですから、

失礼とは存じつつ、こうして帳台の内から簾まで隔てて申し上げましたこと、ご容赦ください」

などとおっしゃいました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


光源氏の大嘘が炸裂しました!
|ノД´|ノД´|ノД´|ノゴルァアアア!!

乳母が病気になって仏門に入り、快復したのは本当ですけどね。

しかし、それと光源氏の失踪とは無関係この上なし。

まして、また具合が悪くなっただの、召使いが急死しただの、これは嘘八百クソまみれです。

まあ、夕顔というのは頭の中将の元カノ=常夏の女ですからね。

死んじゃった(。・ ω<)ゞてへぺろ なんて気楽に告白できるものではありません。

そもそも、光源氏は夕顔の蘇生という奇跡に一縷の望みをかけているようです。

実は、頭の中将が出てきたのは久しぶりなので念のため系図を再掲しておきます。

 

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