門を叩かせなさると、よく分かっていない者が開けたので、そのまま静かに御車を引き入れさせて、
惟光が妻戸を鳴らして咳払いをすると、少納言の乳母が聞きつけて出てきました。
「光る君がお出でになりました」
と惟光が言うと、
「姫はお休みになってしまいました。どうしてこんな夜更けにお見えになったのでしょう」
と、どこか別の女性のもとを訪れるついでの訪問とでも思っているように言いました。
「父宮の所へお移りになると聞いたので、その前に申し上げておきたいことがあって参りました」
光る君がおっしゃいました。
「何でしょう。しかし、ちゃんとしたお答えを申し上げなさることはできないでしょう」
と言って少納言の乳母は笑っておりました。しかし光る君が部屋に入って来なさったので、
「油断して、見るにたえない年配の女房たちが寝ておりますので」
と慌てて申し上げました。
「まだお目覚めになっていないだろうな。どれ、私が起こしてさしあげよう。
このように風情ある朝霧を知らずに寝ていてよいものか」
といって御寝所にお入りになるので、お待ちください、と申し上げる暇もございませんでした。
ぐっすりと眠っている紫の君を抱きかかえて起こしなさると、
「宮がお迎えに参りましたよ」
と、おっしゃりながらまだぼんやりしている紫の君の御髪を撫でて整えなさり、
「さあ、いらっしゃい。私は父宮の御使いで参上したのですよ」
とおっしゃると、父宮ではなかったのだと知った紫の君が呆然として恐ろしく思っているので、
「そんなに怯えないでください。私も父宮と同じ人間なのですから」
と言ってそのまま出て行きなさるので、困惑した大輔や少納言の乳母は、
「これはいったいどういうことですか」
と申し上げるのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
はい、少女誘拐。
(#`皿´)<怒怒怒!!
あと、大輔(たゆう)なんてのが急に出てきましたけどね、こういうのやめてほしいですが、まあ紫の君に付いている女房の呼び名だと思われます。
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