どんなに思っても飽き足りなかったのに、はかなくこの世を去ってしまった夕顔の女に先立たれた未練は、
年月が経っても捨て去ることがおできにならず、ご内室も六条の愛人も、気を許さず、気取った心で気が強いので、
気楽で親しみやすかった愛しさから、かけがえのない存在だったと恋しく思い出しなさるのでした。
「どうにか、おおげさな評判がたっていなくて、とてもかわいらしく、遠慮もいらないような女を見つけたいものだ」
と、性懲りもなく思い続けていらっしゃるので、
少し由緒ありげで評判になっている女の噂はすべて耳にとまっていらっしゃって、
それでも良い女かもしれない、と期待できるような雰囲気があるあたりには、
ちょっとした手紙を送ってそれとなく恋心をにおわせなさるようで、
すると、それを受け取っても心を動かされず、距離を置く女などほとんどおりません。
これまでにもさんざん見てきたことですが。
光る君にお声をかけられても平然としている気の強い女は、
例えようもないほど情けが浅く、真面目一辺倒であまり恋の情趣を知らないと思われ、
そのくせ、そのような姿勢を最後まで通すこともできず、いつの間にか最初の意地は跡形もなく消え去り、
妥協して平凡でつまらない男の妻となる者もいるので、光る君は口説くのをおやめになることもよくありました。
そして、あの空蝉の女をふとした拍子に妬ましく思い出しなさるのです。
また、軒端荻にも、適当な機会があればお手紙をかいて思い出させることもあるようです。
囲碁を打っていた時に火影に見た、あのみだらな姿をまた見たいとお思いになっているのでした。
およそ、一度関係を持った女のことをすっかり忘れてしまうことはおできにならない光る君なのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
末摘花というのはベニバナのことです。
『源氏物語』に登場する数多くの女性たちの中でも一際ぶちゃいくな女として名高い姫君です。
が、今回はまだ出てきません。
それどころか、まだ夕顔だの空蝉だの軒端荻だの言っています。笑
囲碁を打っていた時の話はこちらを参照してください。
久しぶりなので系図をあげて今回はおしまいとします。
【夕顔】
【空蝉/軒端荻】
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