「本来、このようなお出かけには随身のような者をつけてこそ、進展することもあるでしょう。
私を置いていかない方が良いでしょう。身をやつした出歩きは危険なことがおこりがちです」
と、逆に光る君をお諫め申し上げました。
こんな風に見つかってしまったことを、癪なことだとはお思いになりましたが、
頭の中将と亡き夕顔の間に生まれた娘を、頭の中将は見つけ出せずにいるのに、
ご自分はその情報をお持ちになっていることを、お心の内に思い出して優越感を感じていらっしゃるのでした。
お二人は、約束をした女の所にもきまり悪くて行くことがおできにならず、
車に相乗りして、趣深く月が雲に隠れた中、笛を吹きながら左大臣邸にいらっしゃいました。
先払いなどもさせなさらず、そっとお入りになると、人目のない廊下で御直衣にお着替えになり、
平然と今やってきたように振る舞って御笛を気ままに吹きながらお出でになったので、
義父の左大臣殿は例によって聞き逃しなさらず、高麗笛を手にとってお出ましになりました。
左大臣殿は大変な笛の名手だったので、非常に趣深くお吹きになると、
ご内室様は御琴などをお取り寄せになり、上手な女房たちにお弾かせになります。
女房の一人である中務の君は、本当は琵琶が得意だったのですが、
頭の中将に思いを寄せられていたのは振り捨て、
光る君がたまに目を掛けてくださるのは拒み申し上げることができなくて、
自然とそれが噂となり漏れて、ご内室様の母宮様なども、この中務の君をけしからぬ者だとお思いになっていたので、
物思いに沈み、中途半端な心持ちでつまらなそうに端の方に寄りかかっておりました。
光る君にまったくお会いできない他の方にお仕えし直すというのも、さすがに寂しくて思い乱れているのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
光る君と頭の中将は一緒に左大臣邸へと赴きました。
頭の中将にとっては実家、光る君にとっては正妻の邸です。
さて、色々と人物が出てきました。(メンドクサい・・・)
まず、最後の方に出てきた中務の君ですが、正妻・葵の上に仕える女房です。
実は地味に第2巻「帚木」の巻で一度出てきています。(こちら)
その時は、光る君もうち解けた様子を見せてはいましたが、そんな関係だとは書かれていませんでした。
それから、頭の中将と夕顔の間に生まれた子が話題にのぼっています。
頭の中将と夕顔(常夏)の間に生まれた子について少し情報を持っていることで光源氏は良い気になっていますが、そもそも光源氏のせいで夕顔は死んでしまったんですけどね・・・。
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