行幸の日が近づいてきたので、本番に備えた試しの演奏などと大忙しのころ、
大輔の命婦が参上しました。
光る君は、
「おお、どうしている?」
などとお尋ねになり、やはり心のどこかでは気の毒だと思っていらっしゃるようでした。
命婦が姫君のご様子をお伝えして、
「本当に、このように光る君様のお気持ちが離れているようでは、
周りにいる私たちまで心苦しくございます」
と、今にも泣きそうなほどでした。
「奥ゆかしい人だと思わせて終わりにしようと思っていたのを、私が破ってしまったのだ。
酷い男だと思っているのだろう」とお思いになりました。
当の姫君自身の、何も言わずにただ身を潜めていらっしゃる姿に思いを馳せると可哀想なので、
「とてもじゃないが、暇がないのだ。仕方ないだろうに…」とお嘆きになりつつも、
「あまりに物を分かっていないようだからお仕置きしてやろうと思ってね」
と微笑みなさったのが若々しく美しいので、命婦もつい微笑まれて、
「女の恨みを買うお年頃なのだわ。
女へのお気遣いが少なく、好き放題でいらっしゃるのも無理ないことね」と思うのでした。
この忙しい時期が過ぎると、姫君のお邸にも時々お出かけになりました。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
命婦は気の毒な末摘花のため、光源氏に直談判しに宮中を訪れました。
直談判というか、単に泣きついただけですが。
今回は特に補足もいらないかと思うのでこれでおしまいにします。
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