こうして外出を引き留められなさることも多かったので、噂を聞いた人が左大臣家のご内室にお知らせすると、
「いったい誰なのでしょう。とても不愉快なことです」
「今だにどこの誰とも分からず、あのように手元に置いて戯れているということは、高貴で上品な人ではないのでしょう」
「内裏かどこかでちょっと目にした女を重々しくお扱いになって、人に責められないように隠してらっしゃるように思えます。分別もなさそうですし、幼い振る舞いをするそうですから」
などと、お仕えする女房たちは話していました。
帝も、光る君にそのような女性がいるらしいとお聞きになって、
「気の毒に、左大臣もさぞかし嘆いているだろう。本当に、そなたが未熟だったころ、一心不乱にお世話してくれたことが分からぬそなたではあるまいに、なぜそのように無情なことをするのだ」
とおっしゃるのですが、光る君は恐縮するばかりでお返事も申し上げなさらないので、「左大臣家の妻に不満があるようだ」とお察しになって、光る君に同情なさっておりました。
「しかし、みだらな恋をして、内裏に仕える女房にしても、またよその女性にしても、特別な仲になっているなどというのは見たことも聞いたこともないが。いったいどんな物陰に隠れながら歩き回ってこんな風に恨まれているというのか」
とおっしゃるのでした。
帝はお年を召していらっしゃいましたが、女性は常にそばに置きなさり、采女や女蔵人など、容姿に優れていたり風情があったりする女を特に好んでお引き立てになったので、風流な女房がたくさんいたのです。
光る君がちょっと言い寄りなさると、寄ってこない女房などはほとんどいないので見飽きてしまったのでしょうか、本当に奇妙なほど女にそっけなくていらっしゃる、ということで、試しに女房たちの方から戯れごとを申してみることもあるのですが、それにも薄情ではないという程度の返事をするばかりで、心を乱したりはなさいません。
ですから、真面目すぎて物足りない、と思い申し上げる女もいた程なのです。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
もちろん、葵の上としては面白くないわけです。
まあでも、馬が合わないんだからしゃーないですわな。
不幸な結婚と言わざるを得ませんが、帝もその点に同情しています。
そして終盤の件、光源氏が女の噂もなく、女性から「真面目すぎてつまらん」と言われています。
これは「帚木」の冒頭で書かれていたことが思い出されます。
そんなの覚えてないよ、という方は今一度ここを振り返ってみてください。
では今回はここまで。
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