源氏物語~花宴~(2)


源氏物語-花宴

音楽や舞なども、帝はもちろん準備万端整えていらっしゃいます。

次第に夕暮れが近づいてきた頃の「春の鶯さえずる」という舞が非常に素晴らしくございました。

いつぞやの紅葉の候の行幸における、光る君の青海波が思い出されて、春宮は桜の枝を簪としてお与えになって舞うようにと強くおっしゃるので、光る君はお断りすることができず、席を立ってゆったりと穏やかに袖を返す所を一指し、気持ちばかり舞いなさったのですが、それはもうこの上ない素晴らしさでした。

御覧になっていた左大臣殿は、来訪が途絶えがちである恨めしさも忘れ、感涙を流していらっしゃいます。

「頭の中将よ、さあ、あなたも。遅いですよ」

と帝がおっしゃるので、『柳花苑』という舞を舞われました。

光る君よりもすこし長めに舞ったのですが、こうなることを予想してご準備されていたのでしょうか、非常に素晴らしくございました。

光る君を差し置いて褒美の御衣を頂戴したことを、人々は非常に珍しいことに思っていました。

上達部の方々も皆入り乱れてお舞いになりましたが、夜になっていたのでよく見えず、上手い下手の判別はできませんでした。

さて、先ほど頂いた題に従って作成した漢詩を披露する時になりました。

詩作においても光る君の才能はあまりに素晴らしく、講師も感極まってすらすらと詠み上げることができず、句ごとに途切れ途切れ吟じるのでした。

博士たちも光る君の詩の出来映えを大変素晴らしく思っております。

このような折にも、皆がまずこの君を引き立てて光り輝かせなさるので、帝もどうしてこの君をおろそかにお思いになることがあるでしょうか。

藤壺中宮も、この君に御目がとまって、

「春宮の母女御が、一心に光る君を憎んでいらっしゃるのもおかしなことだけれど、私がこうしてこの君を愛しく思うのもつらいことだわ」

と、自省していらっしゃるのでした。

おほかたに花のすがたを見ましかば露も心のおかれましやは
〔純粋な気持ちで美しい花のようなあの方の姿を見ることができたなら、ほんの少しでも気が引けるようなことがあっただろうか、いやあるはずがない〕

お心の中で詠んだにすぎないこのうたが、どうしてこのように漏れ伝わってしまったのでしょうか。

たいそう夜更けに観桜の宴はお開きとなりました。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


ちょっと忙しくて間隔が空いてしまいました。

短い巻だからといって油断してはいけませんね。

さて、観桜の宴は早くも終了しました。

前回も書いたやばい事件が起きるのも間もなくです。

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