源氏物語~花宴~(3)


源氏物語-花宴

宴に参加していた上達部の方々はそれぞれ別れて行き、藤壺中宮も春宮もお帰りになったのですっかり日常の静けさを取り戻したのですが、月がとても明るくさし昇って風流だったので、酔い心地の中、この景色を見捨ててやり過ごすのは残念だと思われなさった光る君は、

「殿上の間に控えている宿直の人々も、もう休んでいるだろう。こんな思いがけない時に、ひょっとしたら隙があるかもしれない」

と、藤壺のあたりをたいそう忍びやかに歩きまわって様子をうかがったのですが、話しかけるはずの戸口も固く閉ざされていたのです。

嘆きながら、しかしやはりそのまま帰る気にはなれずにうろうろと歩いて、弘徽殿にお立ち寄りになってみると、西廂の三の口が開いていました。

弘徽殿の女御は、宴の後、そのまま清涼殿の上の御局にお出ましになったため、人は少ないようです。

奥の扉も開いていて、人の気配もしませんでした。

「このような所から男女の過ちというものが起こるものだよ」と思いつつ、そっと長押にのぼって部屋の中お覗きになると、女房たちは皆寝ているようでした。

すると、ふとそこに、非常に若々しく魅力的な、普通の人とは思われない声で、

「朧月夜に似る物ぞなき」

と唄いながらやって来る女がいるではありませんか。

嬉しさに舞い上がった光る君は、思わず女の袖をお掴みになりました。

女は怖ろしく思った様子で、

「あっ。何てこと。誰?」

とおっしゃいましたが、

「恐がることとはありませんよ」といって、

深き夜のあはれを知るも入る月のおぼろけならぬ契りとぞ思ふ
〔春の夜更けのしみじみとした情趣を知る私たちが巡り逢ったのも、並々ならぬ前世からの因縁だと思うのです。沈みゆく月はぼんやりと朧気ですが〕

とお詠みになり、そっと抱いて廂の間におろすと、戸をお閉めになってしまいました。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


さあ、いよいよでございます。

朧月夜ちゃんとの危険極まりない火遊びに突入したでござるよ。

源氏絵鑑帖・花宴

源氏絵鑑帖・花宴

この絵は色彩が美しいですが、夜には見えないですね。笑

顔も知らない貴族の男女が昼間からこんなに接近することはありません。

ともあれ、先述の通り、このアヴァンチュールはいくら何でも危険の度が過ぎます。

何しろ、ここは光源氏にとっては敵地といえる弘徽殿ですからね。

そこで出会った女性・朧月夜ちゃんの正体やいかに。

それはそうと、文中に出てきた「清涼殿の上の御局」というのは、后が天皇に呼ばれて清涼殿に参上した際に入る部屋です。

そして、弘徽殿の見取り図に関して詳細に解説されている素晴らしいサイトを見つけました。

ぜひ参照してみてください。

<<戻る   進む>>

 

Posted in 古文 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です