日が高く昇り、大袈裟な儀式めいたことはせずにお出かけになりました。
隙間もないほどにびっしりと見物の車がひしめいていて、美しく飾り立てた御一行の車は列をなして立ち往生してしまいました。
見物の車は高貴な女性のものが多く、従者がいない車を見定めてはどかして割り込んでお入りになっていったのですが、その中に少し使い古した感のある網代車で、品良く下簾を垂らしているのがありました。
ひどく遠慮がちな様子で、袖口、裳の裾、汗衫などを控えめに出していたのですが、それらの色合いはたいそう美しく、高貴な身分を隠したお忍びの方だと見てとれる車が二台駐まっていたのです。
その車の従者たちは、
「こちらは、決して今していたように乱暴にどかすことが許される御車ではない」
と強く言って、手も触れさせません。
双方の従者たちはひどく酔っており、騒ぎを起こすのを鎮めることができません。
年配の前駆の者たちは、
「そんな乱暴はするな」
などと言うのですが、まったくとまりません。
その網代車というのは、斎宮の御母御息所が、物思いの慰めになるだろうかと、お忍びでお出でになっていたもので、ご内室方もそうと気づかない風を装っていましたが、実は分かっていたのでした。
「その程度の家柄で何を言うか」
「光る大将殿の権勢をあてにしているのだろうが、こちらはそのご内室様であるぞ」
などと従者たちは言っており、その従者たちの中には光る君のお供をして六条御息所の所へ随行してきた者もあり、彼らは内心気の毒だと思いつつ、かばい立てするのも厄介なことになりそうだったので知らぬふりをしています。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。
始まりました。
キチャッタ───-( ゚A゚ )─────!!
有名な、賀茂祭における、葵の上と六条御息所の「車争い」です。
車争い自体は次回で終了ですが、これを端緒とした物語は始まったばかりでございます。
では今回はここまで。
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