二条院では、人々が磨きあげるように綺麗にして、男も女も光る君をお迎えしました。
上級の女房たちがみな参上して、我も我もと美しく着飾って化粧しているのをご覧になるにつけても、左大臣邸での、皆が気落ちしてうなだれて座っている様子が悲しく思い出されました。
光る君は喪服をお着替えになってから西の対にお出でになりました。
衣替えが行われ、冬にあわせた部屋の装飾は明るく鮮やかで、上品で若い女房や子どもたちの姿恰好も見苦しくないように整えられており、「少納言の差配は実に見事で奥ゆかしいものだ」とご覧になります。
もちろん、若紫の姫君は一段とかわいらしく身なりを整えていらっしゃいます。
「随分と長く見なかった間に、本当にこの上ないほど大人らしくおなりになったね」
と言って、小さい御几帳をめくってご覧になると、顔を背けて恥ずかしがっていらっしゃるご様子で、そのかわいらしさといったら物足りない所などあるはずもございません。
灯火に照らされた横顔、頭の形など、「恋い焦がれて物思いの種となっている、あの方と段々そっくりになっていくなあ」と見なさるにつけ、光る君は非常に嬉しくなるのでした。
近くお寄りになって、早く会いたいと待ち遠しく思っていたことなどを申し上げなさり、
「最近のことなど、のんびりとお話をしたいのですが、死の汚れに触れた我が身が忌々しくも思われますので、しばらく自室で休んでからまた改めて参上しましょう。これからはあなたをずっと見ていられるから、逆に私を鬱陶しくお思いになるかもしれませんよ」
とお話し申し上げなさるのを、少納言は嬉しく思って聞くものの、いまいち信用していません。
「光る君様には、大事にしているお通い所をたくさん持っていらっしゃるから、またそのうちやっかいな女が現れるのではないかしら」と思っていたのは憎らしい心ですよ。
光る君はご自分のお部屋にお戻りになると、中納言の君という女房に御足をさすらせながらお休みになりました。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。
若紫の姫君の所に帰って来ました。
左大臣家での鬱々とした暗い雰囲気と対照的に明るい雰囲気が広がります。
藤壺中宮にどんどん似てくるなあ、という光源氏。
なにしろ、つい今し方に藤壺中宮に謁見してますからね、簾越しですけど。
若紫の君が藤壺中宮に似てくるのは血縁があるからでしたね。
葵の巻もようやく終わりが見えてきました。
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