現代語とのギャップが大きい古語その1。
思ひやる
現代語では、他人の気持ちを考えて気遣いをする、という意味ですね。
古語辞典を引いてみると、
①憂いを晴らす ②思いを馳せる、想像する ③気づかう
と出てきますが、②の意味で使われることが多い印象です。
その河のほとりにむれゐて思ひやれば…(伊勢物語)
→その河のほとりに皆で座って(京に)思いを馳せると…
さて、古文で「やる」と出てきたら「遣る」という字を考えます。
従って、「思い」を「遣る」のが「思ひやる」ということになります。
「遣る」という語は「派遣」から想像すれば分かる通り「遠くに移動させる」意味です。
「自分の思いを遠くに飛ばす」のが「思ひやる」ということになるでしょう。
自分の心の中にある思いが憂鬱なものである時、その憂いを心から追い出して飛ばしてしまう、というのが「思ひやる」の①の意味です。
そして、自分は留まったまま、心だけを飛ばして推測するのが「思ひやる」の②の意味です。
「西の方ではそろそろ桜が咲き始めるのかなあ」などという感じで想像することです。
そこから派生して、他人の気持ちを推測してそれに寄り添おうとすることが③の意味になるので、③は②の中に吸収できるようにも思いますが、現代ではもっぱらその③の意味で使われます。
ということで、第1回は「思ひやる」についてでした。
2-「あきる」>>