好評だったかどうかは分かりませんが、昨日に引き続き「物の名」です。
どうせ世間は3連休、こんなブログを読んでくれるありがたい方がどれくらいいるか分かりませんが。
さて、昨日も書いたとおり、「物の名」というのは和歌中に事物の名を隠して読み込む作歌技法です。
『古今和歌集』では第十巻がまるごと「物の名」の歌を集めたものになっています。
面白そうなのはないかなー、と探したものをいくつか。
本当は、最初に何が隠されているのか書いてあるのですが、伏せておきますね。
答えは最後にまとめて書きます。
(1)今幾日春しなければうぐひすも物はながめて思ふべらなり
(2)あしひきの山辺にをれば白雲のいかにせよとか晴るる時なし
(3)小倉山みねたちならし鳴く鹿の経にけん秋を知る人ぞなき
三首とも紀貫之の歌です。
さあ。見つかりますかね?
昨日も書きましたが、歌の意味内容とは関係のない事物が詠み込まれるのが普通です。
じゃあ、仕方ないからヒントを出しましょう。
(1)は第三句と第四句のあたり。
(2)は第四句と結句のあたり。
(3)は歌全体。これは他とまったくタイプが違います。
参考までに歌意を記しておきます。
(1)もう数日しか春も残っていないので、鶯も物思いにふけっているようだ。
(2)山辺にいると白雲が晴れる時がないように、私の心も晴れる時がない。いったいどうしろというのか。
(3)小倉山の峰を行ったり来たりして鹿が鳴きながら過ごした秋を知る人はいない。
では答えに行って良いですか?
(1)は「すももの花」です。三・四句をひらがなにすると「うぐひすもものはながめて」になります。
(2)は「淀川」です。四・結句をひらがなにすると「いかにせよとかはるるときなし」になります。
(3)は「女郎花(をみなへし)」です。「をぐらやまみねたちならしなくしかのへにけんあきをしるひとぞなき」となります。
各句の先頭の一文字を摘み取っていくと「をみなへし」になり、「物の名」の中でも特に「折り句」と呼ばれる技法です。
折り句で有名なのは『伊勢物語』第九段の歌。
からころも着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ
学校でも「東下り」として有名なこの章段を扱う所があると思います。
「からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ」となります。
「カキツバタ」を詠んだ歌なのですね。
もちろんと言って良いのか、在原業平の作です。
この歌も『古今和歌集』に採られていますが、第十巻「物の名」ではなく第九巻「羇旅歌」の部に入っています。
今日はこの辺でおしまいにしたいと思いますが、いかがでしたか?
個人的には面白いんですけど。
また面白い和歌について、いつか書いてみたいと思います。
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