~前回までのあらすじ~
(1)雨が降り続く日、帝の使いとして式部丞信経がきまちた。座布団をネタに私がダジャレを言ったのに信経は軽くあしらってくるのでちた。ぷんすかぷん。
(2)私は悔ちかったので、過去にダジャレが高く評価された事例を信経に話して聞かせまちた。
シリーズ最終回です。
タイトルにふさわしく昨日・一昨日あたりは雨がザーザーでした。
今日もあまり天気は良くないですね。
関東でも一時雪が降った所もあるとか。(夏海ちゃん情報)
さて、清少納言から長々と過去のダジャレの事例を聞かされた信経。
どういう反応を示すのでしょうか。
【現代語訳】
信経は「それもまた、“時柄”という人名が言わせたものでしょう。いぬたきが凄いとは認められませんね。
すべてはただ題によって、詩も和歌もすぐれたものとなるのです」と言うので、
私が「確かにそうですね。それでは題を出しましょう。歌をお詠みなさいな」と言った。
信経が「とても良いことだね」と言うので、
「中宮様の御前で、どうせならたくさん題をお出ししましょう」などと言ううちに、
中宮様からのお返事ができたので、
信経は「ああ、恐ろしい。逃げましょう」と言って退出してしまったので、
みんなが「とっても漢字もひらがなも下手くそに書くのを人が笑ったりするものだから、
隠しているのよ」と言うのも面白い。
信経が作物所の長官をしているころ、誰のもとに送ったのだろうか、何かの下絵を送ってきたのに、
「このように仕立てよ」と書きつけてある、信経が書いた漢字の姿、
そのぶざまな文字といったら例がないほどなのを見つけて、
私が「このきったない字のように仕立て申し上げたら、異様なものになるでしょうね」と書き添えて殿上に送ったところ、
それを手に取って人々が見てひどく笑ったので、信経は大変に腹を立てて私のことを憎んでいた。 <おわり>
これで終わりです。
清少納言の出した過去の事例も信経は認めません。
題に助けられただけであり、発言者の能力とは認められない、という主張です。
うーん。そうですかね?題をもとに面白いことを言う、って簡単なことじゃないですけどね。
まあ、信経はそう思っているようです。
清少納言はいっそうムキになって、
「じゃあ、題を出してあげるからあなた上手いこと言ってごらんなさいよ」
とケンカをふっかけます。
最初は「やってやろうじゃん」と言った信経ですが、中宮様の前で、と言われた途端に逃げます(笑)
中宮様の前だと肉声で直接は話せないから紙に和歌を書くことになる、ということでしょうかね?
他の女房の「悪筆を隠して逃げたのよ」という弁を聞くと、そうとしか思えませんがどうなんでしょう。
清少納言の「このきったない字のように仕立て申し上げたら」というのは、
信経の「このように仕立てよ」の指示語「このように」が、下絵ではなく信経の字を指すと解釈したら、ということでしょう。
ちなみに、信経とは藤原信経で、紫式部の従兄弟にあたる人です。
それにしても、今回はあんまり訳に味付けができませんでした(笑)
なんだろうなあ。訳しにくかったです。
まあ、そんなわけで、最後に原文を載せて終わりにします。
【原文】
「それまた時柄が言はせたるなめり。
すべてただ題がらなん、文も歌もかしこき」と言へば、
「げにさもあることなり。さは、題出ださむ。歌よみ給へ」と言ふ。
「いとよきこと」と言へば、
「御前に、同じくはあまたをつかうまつらん」など言ふほどに、
御返し出で来ぬれば、
「あなおそろし。まかり逃ぐ」と言ひて出でぬるを、
「いみじう、真名も仮名もあしう書くを、人の笑ひなどすれば、隠してなんある」と言ふもをかし。
作物所の別当するころ、誰がもとにやりたりけるにかあらん、物の絵やうやるとて、
「これがやうにつかうまつるべし」と書きたる真名のやう、
文字の世に知らずあやしきを見つけて、
「これがままにつかうまつらば、ことやうにこそあるべけれ」とて殿上にやりたれば、
人々とりて見て、いみじう笑ひけるに、
おほきに腹立ちてこそにくみしか。
[ 枕草子~雨のうちはへ降るころ~(1)][ 枕草子~雨のうちはへ降るころ~(2)]
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