本当に、藤壺様のお顔立ちやお姿は不思議なほど桐壺様にそっくりでいらっしゃいました。
しかも桐壺様と違ってご身分も高く評判も素晴らしくて、
誰もさげすみ申し上げなさることなどできるものではございませんでしたので、
何も気兼ねすることなく過ごして大変に満ち足りた様子でいらっしゃいました。
思えば、桐壺様に関しては人々がお認め申し上げなかったために、帝のご愛情はかえって増していったのでした。
帝のお気持ちが紛れなさるというわけではありませんでしたが、それでも自然と藤壺様にお心は移って、
たいそう心が慰められる様子でいらっしゃるのにつけて、何とも言えずしみじみ感じるものがありました。
源氏の君は帝のおそばを離れなさらないので、他のお后様方もですが、
帝が足繁くお通いになる藤壺様はまして源氏の君と対面するのを恥ずかしがっているわけにもいきませんでした。
どのお后様にしても、自分が人より劣っているとお思いになっているはずもなく、
それぞれに素晴らしいのですが、それなりにお年を召していらっしゃるのに対して、
藤壺様はとても若くてかわいらしい感じでございまして、しきりに源氏の君の目から隠れようとなさるのですが、
源氏の君の方で自然とそのお姿をちらっと拝見したりもするのでした。
その源氏の君は母親である桐壺様のことはまったく覚えていらっしゃいませんでしたが、
「藤壺様にとても似ていらっしゃったのですよ」と内侍の典侍が申し上げたので、
幼い御心から非常に恋しく思い申し上げて、
「いつも藤壺様の所に参上して一緒にいたいな」とお思いになっていました。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
幼くして実母を失った光源氏は強烈なマザーコンプレックスを負うことになりました。
藤壺が母親に似ていると聞かされたことで藤壺に近づきたい一心の幼い光源氏。
かわいそうでもあり、また愛しくもありますね。
このくらいの時の光源氏はいいのですが・・・笑
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