伊勢物語~鍋かぶり~


鍋。

土鍋です。

土鍋があったので、とりあえず頭にかぶってみました。

しかし土鍋は重い。

首に負担がかかりますな。

手でおさえてないとずり落ちてくるし。


【現代語訳】

昔、ある男が、まだ恋愛をしたことがないと思われた女が密かに身分ある男と情を交わしたことを知り、しばらくしてから女に詠み送った歌。

近江なる筑摩の祭とくせなむつれなき人の鍋の数見む
〔近江にある筑摩神社の祭りをはやく催してほしいものだ。私を冷たくあしらったあなたが鍋をいくつ頭にかぶるのか、見てみたい。〕


これは『伊勢物語』の第百二十段です。

ご存知の方も多いとは思いますが、近江国とは今の滋賀県です。

琵琶湖が「都から近い淡海あわうみ」であることにちなんでつけられた名称が近江おうみです。

「江」というのは、もともとは川を指す漢字ですが、

日本では「海や湖などの陸地に入り込んでいる所」も「江」と言います。(『漢語林』より)

ちなみに、「都から遠い淡海」である浜名湖がある地域(今の静岡県西部)は遠江とおとうみと呼ばれていました。

 

で、その近江国の琵琶湖東岸に「筑摩神社」という神社がありました。

今もありますが、古くは「つくま」と読み、今では「ちくま」と読むようです。

その筑摩神社で行われる「筑摩の祭り」を、三省堂詳説古語辞典で調べるとこう書いてあります。

滋賀県坂田郡米原まいはら町にある筑摩神社で行われる祭り。陰暦四月一日に行われ、村の婦女が関係を結んだ男の数だけ鍋なべを頭にかぶって参拝したという。
※2000年に発行された辞書なので「坂田郡米原町」となっていますが、2005年に米原まいばら市となったそうです。

かなりハードな祭りですよね。ギョエ(゚ロ゚屮)屮

つまり、『伊勢物語』の男は、男性経験がないと思っていた女にふられ、その女に恋人ができたことを知ると逆恨みし、

 

このクソ女、かまととぶりやがって、本当は昔からたくさん男と遊んでたんだろ?!
(☄ฺ◣д◢)☄ฺワシャー

と、言われもない(?)暴言を吐くわけですが、暴言も和歌になると何だかトゲが取れますね。

トゲがとれる代わりに、かえって嫌味が増してムカつく気もしますが。

 

この祭りは今にも伝わっていて、毎年5月3日に催され、「日本三大奇祭」の一つに数えられているそうです。

ただし、現在では7歳~8歳の少女が張り子でつくった鍋を1つ頭にかぶって歩くことになっているとか。


【原文】

むかし、男、女のまだ世経ずとおぼえたるが、人の御もとに忍びてもの聞こえて後、ほど経て、

近江なる筑摩の祭とくせなむつれなき人の鍋の数見む

 

 

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