源氏物語~夕顔~(13)


一時的な仮住まいであるにしても、その住居の様を思うと、

「これこそ頭の中将が、興味がないときっぱり決めつけ蔑んでいた下流階級の女だろう。

だが、その中に、思いもしなかった面白いことがあったとしたら」などとお思いになるのでした。

惟光は、どんなことも光る君の御期待に応えよう、と思っており、

彼自身もぬかりのない好色な心を駆使して巧みに計略をめぐらし、あちこち動き回って、

強引に光る君を夕顔の家に通わせ始めました。

この過程はあまりにも煩雑なので、例によってここには書きません。

相手の女の正体がお分かりにならないので、

御自分も名乗りなさらず、たいそうひどく粗末な身なりに変装なさって、いつもと違い、熱心に通いなさるのは、

本気でいらっしゃるに違いないと思われるので、

惟光は自分の馬を光る君にお貸しして、自分はそのお供として走り回るのでした。

「こんな風に徒歩で出歩くみっともない姿を恋人に見られたら辛いんですけどね」

などと泣き言を言うのですが、誰にも知らせなさらないまま、以前に夕顔の花を手折った従者と、

その他には顔を知られていないはずの子供を一人だけ引き連れてお通いになりました。

「万が一、私の正体に気づいてしまったら」とお思いになって、隣の乳母の尼君の家にもお立ち寄りになりません。

女の方でも、たいそう奇妙に思い、腑に落ちないので、

光る君からの文の使いの後を追わせ、また、光る君が夜明け前に帰っていく後をつけさせるなどして

御住居をつきとめようとするのですが、うまい具合に行方をくらましつつ、

しかし、あまりの愛しさにさすがに会わずにいることもできず、この女がお心にかかっているので、

軽率で好ましくないことだという御自覚はありつつも、かなり頻繁にこの夕顔の家を訪れなさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


ついに夕顔の家に通うようになった光源氏です。

うーん、でもまだかわいいかわいい夕顔ちゃんがちゃんと出てきません。

本格登場はもうちょっと先です。

 

さて、

これこそ頭の中将が、興味がないときっぱり決めつけ蔑んでいた下流階級の女だろう。

と出てきましたが、原文は、

これこそ、かの人の定めあなづりし下の品ならめ。

です。

ここまでちゃんと読んできていれば、「雨夜の品定め」のことを言っているのは分かります。

しかし、「かの人」が誰を指すのかについては説が分かれているようです。

頭の中将として訳しましたが、これを左馬の頭とする説もあります。

ですが、左馬の頭だとすると、「下流階級の女を蔑んだ場面」が見あたりませんでした。

本文に書かれていないところでそういうのがあった、ということなのでしょうか?

これを頭の中将と考えると、

下流階級にまでなってしまうと、別段興味も湧かないけどね。

というセリフが出てきます。原文は、

下のきざみといふ際になれば、ことに耳たたずかし。

で、「雨夜の品定め」の序盤に出てきます。(参照

 

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