ようやく、惟光が参上しました。
いつもは夜、朝と問わず、光る君に服従しているのに、この夜に限ってお側を離れ、
お呼び出しにもぐずついてなかなか現れないのを憎らしくお思いになりつつお呼び入れになったものの、
おっしゃろうとしていることの、あまりの張り合いのなさに、容易にはお言葉が出てきません。
右近は、惟光がやってきたことに気づくと、
夕顔の花を縁とした馴れ初めからの様々なことが思い出されて泣いておりました。
光る君も堪えることがおできにならず、今までお一人で正気を保って右近の肩を抱いて励ましていらっしゃいましたが、
惟光の登場でほっとなさると、痛切な悲しみが押し寄せてきて、
しばらくの間、涙を抑えることができず、激しくお泣きになっておりました。
そして、少し気持ちを落ち着けて、
「ここで、非常に恐ろしく奇怪なことがあったのだ。驚いた、などという生半可なものではない。
こういう緊急事態には経を読み上げるものだと思って、
また、その他に祈願もさせようと阿闍梨も呼ばせたのだが、どうなっている?」
とおっしゃると、
「兄は、昨日比叡の山へ帰ってしまったのです。それにしても、実に奇妙なことですね。
夕顔の女君の具合が悪かったということはありませんでしたか?」
「いや、そんなことはなかった」
といってお泣きになるお姿はたいそう美しく、またおいたわしくて、
見申し上げる人も非常に悲しくなり、惟光も涙を流しておいおいと泣くのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
腹心の従者である惟光がようやく駆けつけました。
惟光が来たところで事態が解決するわけではないのですが、光源氏は少し落ち着きを取り戻しました。
前々回、惟光の他に阿闍梨あじゃりも呼び寄せるよう命じていた光源氏ですが、阿闍梨は来ませんでした。
阿闍梨というのは僧侶の称号です。
前に乗せた系図ですが、阿闍梨というのは惟光の兄にあたる人物です。
そんなわけで、今回はここまで。
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