源氏物語~葵~(33)

朝には若君のもとにお手紙をお出しになりましたが、しんみりとしたお返事をご覧になるにつけ、悲しみは尽きることがありません。

特にすることもないまま、ぼんやりと過ごしていらっしゃいましたが、何とはなしのそぞろ歩きも嫌になってしまい、出かける気にもなりません。

若紫の姫君が、あらゆる点で理想的で、完璧に整っており、たいそう素晴らしくお見えになるのを、一対の男女として似つかわしい頃合いだと御覧になった光る君が、色めいたことなどを話しかけてみたりもなさるのですが、まったくお分かりになっていないご様子です。

手持ち無沙汰にまかせて西の対にお出ましになっては、碁を打ったり偏継ぎをしたりしてお過ごしになっていると、姫君のお心が実にかわいく魅力的で、ちょっとした遊びごとの中にもかわいらしいことをしなさるので、幼い少女として諦めていた年月においては、幼さによるかわいさだけでしたが、今や溢れてくる異性への情愛の念を堪えきれず、親子のような関係として暮らしてきたので、姫君の心中を考えるとかわいそうにも思われましたが、とうとう男女の関係を結びなさるのでした。

傍目にはご関係が以前までと変わったわけではないのですが、光る君は早くに起きなさり、若紫の君はまったく起きようとなさらない朝がきました。

女房たちは、

「どうしてそのように寝ていらっしゃるのでしょう」

「具合が悪くていらっしゃるのでしょうか」

と見申し上げて嘆いていましたが、光る君は自室にお戻りになるとのことで、御硯の箱を御帳台の中に差し入れて退出なさいました。

若紫の君は、人目がない隙に、やっと頭を持ちあげなさってみると、結んだ文が御枕元にあります。

何気なくほどいてご覧になると、

あやなくも隔てけるかな夜を重ねさすがになれし中の衣を
〔意味もなく隔たってきたことです。幾夜も衣を重ねて共寝をし、さすがに馴れ親しんだ私たちの仲ですのに〕

と、思うがままに書いているようです。

こんなお心があろうとは夢にも思っていらっしゃらなかったので、「どうしてあのお方の情けないお心を何の疑いもなく私は信頼してしまったのだろう」と情けなくお思いになりました。

※雰囲気を重んじた現代語訳です。


光源氏、ついに若紫の君とワッショイしてしまいました。
ヽ(・∀・)ノ ワチョーイ♪

いつかこの日が来るのは既定路線でしたが、若紫の君は憔悴しております。

さて、その前に出てきた「偏継ぎ」ですが、三省堂詳説読解古語辞典によると、「文字遊戯のひとつ。漢字の旁つくりを出し、それに偏を多く継いだものを勝ちとするもの」とのことです。

風俗博物館(COSTUME MUSEUM)にて撮影

カルタみたいな感じで遊ぶようです。

さて、拗ねてる若紫の君ですが、この後どうなるのでしょうね。

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