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源氏物語~賢木~(19)

御髪は美しくゆらゆらとして、瞳は吸い込まれそうなほどでいらっしゃり、そのお姿は成長なさるにつれて光る君と生き写しのようになっていくばかりでした。
少し虫歯になった歯が黒くなったまま微笑んでいらっしゃり、そのあまりの愛らしさに、この方が女性だったらどんなにか美しいことだろう、と思われるほどです。
「本当に、こんなにも光る君にそっくりでいらっしゃるのがつらいこと」と、中宮様が玉の瑕のようにお思いになっているのは、口うるさい世間の煩わしさが空恐ろしく思われるからに他ならないのでした。
光る大将の君は、春宮のことが恋しくてたまらないのですが、「たまには、あのあきれるほど冷淡な御心を後悔していただこう」と耐え忍びつつお過ごしになっていたのですが、そうしていればいるほど人目にもみっともなく、またつまらなくもお思いになられたので、秋の野原を眺めがてら、雲林院に参籠なさることにしました。
「亡き母の兄上である律師がお籠もりになっている坊で法文を読んだりしてお勤めをしよう」とお思いになって二、三日ほどいらっしゃると、しんみりするようなことが多くございました。
辺りの木々はだんだんと紅葉し始めて、秋の野原の非常に風情ある景色などを御覧になっているうちに、思わず都のことを忘れてしまいそうになるほどです。
学才のある法師だけをお集めになって論議をさせ、それをお聞きになるようなこともありました。
場所が場所だけに、ますますこの世の無常を身にしみて感じずにはいられません。
そのようなご気分のまま夜を明かしなさるにつけ、やはりつれない藤壺中宮のことを思い出さずにはいられません。
明け方の月のもと、法師たちが閼伽棚にお供えをするといってからからと音を立て、菊の花や紅葉などを無造作に折り取っているのも、ちょっとしたことのようではありますが、
「仏道に携わっていると空しさも紛れ、来世も頼もしく思えてくる。本当につまらない身の上を悩ませているものだな」
と思い続けなさるのでした。
律師が、非常に尊い声で、
「念仏衆生摂取不捨」
と伸びやかに唱えなさっているのも羨ましく、「なぜ私はこの世界に身を置けないのだろうか」とお思いになるにつけ、すぐに紫の姫君が思い起こされ、これではとても御出家などできたものではありません。
例ならず長い日数を隔てているのも気がかりに思われて、お手紙ばかりは数多くお送りになるようです。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。

光源氏はやるせなさに耐えかねて雲林院に参籠なさることにしました。
雲林院は紫野にあります。
雲林院は行ったことがありますが、現在では非常にこぢんまりとした寺院です。
 
タクシーの運転手に聞いても(嵐山の辺りで)分からないほどでした。
しかし、この当時は非常に広大な敷地面積を誇る大寺院だったそうです。
光源氏が籠もるくらいですから、当然かもしれませんね。
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