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源氏物語~賢木~(14)

こうして尚侍と情愛を交わしてみるにつけても、遠ざけてつれないご様子である藤壺中宮のお心を、立派だとお思いになりながら、「心惹かれる御方だが、やはり薄情でつらい」とお思いになることが多くなりました。
その中宮様はというと、内裏に参上なさることがきまり悪く、居心地が悪いとお思いになるようになってしまい、すっかり足が遠ざかった結果、春宮を御覧にならないことだけを気に掛けていらっしゃいました。
また、頼りにできる人もいらっしゃらないので、ただこの光る大将の君を何かとあてにしていらっしゃったのですが、今なお忌々しくもお心を寄せていらっしゃるので、ややもすると、御胸が潰れそうなほど心を悩ませることが度々ございました。
光る君との恐ろしい秘密に少しもお気づきにならないままお亡くなりになってしまった院のことを考えただけでも非常に恐ろしいのに、更に噂が立っては、わが身はさておいても、春宮の御ためにきっとよくないことが起こるだろう、と非常に恐ろしくお思いになりました。
「光る君の思いが静まりますように」と祈祷までおさせになるほど、そのことばかりをお考えになって光る君から逃れなさっていたのですが、どのような機会だったのでしょうか、驚くべきことに、忍び込むことに成功なさったのです。
深謀遠慮を巡らせなさったこのあらましを知る人もいなかったので、夢でも見ているかのようでした。
書き記すのも憚られるような求愛の言葉をかけ続けなさいましたが、中宮は断固として光る君を遠ざけなさり、ついには胸をおさえて苦しみ出したので、近くに伺候していた命婦や弁たちが大慌てで介抱して差しあげるのでした。
光る君はこの上なくつらいお気持ちになって、これまでのことやこれからのことをお思いになると真っ暗闇に放り出されたような絶望からご正気を失ってしまわれ、夜もすっかり明けたというのに、御退出になりません。
中宮様がお苦しみになるのに驚いて、女房たちが近くに参上して大勢が入り乱れるので、光る君は呆然としたまま塗籠に押し込められてしまいました。
光る君の御装束を隠し持っている女房たちは、心の中で非常に煩わしく思っています。
中宮様はものごとをたいそう憂鬱に思っていらして、熱っぽくのぼせたような感じで、いっそうお苦しみになっています。
兄の兵部卿の宮や中宮大夫なども参上して、
「僧侶を呼びなさい」
などと大騒ぎしているのを、光る大将の君はたいそういたたまれない気持ちでお聞きになっていました。
中宮様は、日が暮れていくころになって、ようやく快復なさったのでした。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。

前回、朧月夜と契りを交わした光源氏はその直後から藤壺中宮への思いを募らせています。
(# ゚Д゚) ゲスノキワミ
そしてその欲望のまま、藤壺中宮に接近することに成功します。
(# ゚Д゚)キチクノショギョウ
その結果、藤壺中宮は心労から倒れてしまいます。
(# ゚Д゚)ライセヒトニウマレルトオモウナヨ
藤壺が倒れたところで騒然となり、
(♯▼皿▼)ジャマ!
と女房たちにぶち切れられ、光源氏は塗籠ぬりごめに押し込まれてしまいました。
「塗籠」を三省堂詳説読解古語辞典で引いてみると、
寝殿造りの母屋もやの一部に設けられた小部屋で、周囲を塗りこめて壁とし、出入りの妻戸を設けたもの。本来は寝室であったが、のち、多く納戸なんどとして用いられた。
と説明されています。
『竹取物語』では、月からかぐや姫を取り返しに来るという時に、かぐや姫は塗籠に身を隠しました。
四方が壁で囲まれているため、この部屋に身を潜めている限り(奇声を発したりしなければ)例え人が来てもバレることがない部屋でした。
かぐや姫は月からやってきた宇宙人の神秘的な能力のせいであっという間に見つかりましたが。
哀れな間男感の漂う光源氏ですね。笑
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