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源氏物語~賢木~(13)

帝は亡き桐壺院の御遺言を守って、心から光る君に信頼の情を寄せていらっしゃいましたが、お若くいらっしゃる上に、お気持ちが弱々し過ぎて、気丈なところがおありでないのでしょう。
母皇太后や祖父の右大臣がそれぞれなさることに逆らえず、思うように政務を執ることがおできにならないご様子です。
一方、朧月夜の君は、尚侍になって以来、不自由さが増していましたが、人知れず光る君に愛情を通わせているので、無理にでも時々お便りを交わしておりました。
五壇の御修法の初めに帝が籠もっていらっしゃる隙を伺い、光る君は例によってこっそりと夢のように通って来なさいました。
あの、昔が偲ばれる細殿の局に、中納言の君が人目をごまかしてお入れ申し上げました。
人目が多いので、いつもより端近であるのが何となく恐ろしく思われます。
普段からそのお姿を目にしている人でさえ、見飽きることのない美しい御容姿なので、まして極たまにしかお目にかかれない朧月夜の君にしてみれば、夢中にならないはずがございません。
女君の方も、まさに女盛りといった素晴らしいお姿で、威厳という点ではどうか分かりませんが、魅力的で若々しく優美な感じがして、いつまでも見ていたいほどでした。
間もなく夜が明けるころだろうか、と思われる時、ちょうど近くで「宿直申しに参上いたしました」と声を調えて言うようです。
「同じように、この辺りに密かに通っている近衛司がいて、私がここにいることを、意地悪く教えたのだろうよ」とお思いになると、おかしくも煩わしくもありました。
あちらこちらと尋ね歩いて「寅ひとつ」と申し上げるようです。
尚侍は、
心からかたがた袖を濡らすかなあくと教ふる声につけても
〔あれこれ考えると心の底から悲しくて涙に袖が濡れてしまいます。夜が明けることを告げる声を聞くにつけても〕
とおっしゃる様子は、頼りない感じでとてもかわいらしくございました。
嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや胸のあくべき時ぞともなく
〔嘆きながらこの世を過ごせ、ということだろうか。夜は明けても胸があけて心が晴れる時はないことだ〕
慌ただしく退出なさってしまいました。
夜もまだ深く、月の出ている空が何とも言いようがない雰囲気を醸し出しながら一面に霧が覆っている中、たいそうひどく身をやつして振る舞いなさっている御様子は、他に比べようもない素晴らしさで、承香殿の女御の兄である頭の中将が藤壺から出て、月明かりが届かず少し蔭になっている立蔀の所に立っていたのを、気づかずに通り過ぎなさったとかいうのはお気の毒なことです。
これを機に光る君への非難が出てくることでしょう。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。

光源氏の性欲は病気以外の何物でもないでしょう。
父親の若妻だった藤壺と情を交わした結果として不義の子を宿し、今度はまた帝の妻となってしまった朧月夜の君と。
その密会現場から出てくる所を見られていたという痛快なストーリー!
文春砲、早く炸裂しろ。笑
この、藤壺で光源氏を目撃した人物ですが、「頭の中将」としているものと「藤の少将」としているものがあるようです。
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