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源氏物語~賢木~(5)

月明かりに照らし出されたお姿や、なおも留まっている残り香など、若い女房たちはしみじみ心を惹かれて、過ちでも犯しそうなほど称讃しています。
「あの素晴らしいお姿を見捨てて、お別れ申し上げることができる道なんてあるのでしょうか」
と、ただただ皆で涙をこぼしているのでした。
いつも以上に情愛細やかなお手紙には、つい心が靡きなさってしまいそうなほどでしたが、またしても決心が鈍ってしまってよいはずがないので、そんなお手紙を受け取ってもどうしようもないのでした。
男というものは、それほどの愛情をお持ちになっていなくても、恋の風情のためには取り繕って良いようにおっしゃるようなので、まして、並み一通りのお相手とは思いになっていらっしゃらなかった御方が、こうして世を捨てようとしていらっしゃるのを、残念にも気の毒にも思って光る君はお悩みになるようです。
光る君からは、御息所の旅の御装束を始めとして、女房たちの細々とした調度まで、威厳のある素晴らしいものが餞別の品として届くのですが、気にもお留めなりません。
軽率にも、嫌になってしまうような噂ばかりを世の中に流してきた情けない御自身の有り様をお思いになって、出立の日が近づいてくるにつれて、今さらのように寝ても覚めてもお嘆きになるのでした。
斎宮は幼いお心に、きちんと決まっていなかった出立がこうして段々と確実なものになってゆくのを、ただ嬉しく思っていらっしゃいます。
伊勢に親が同行する異例の事態について、世の声は非難も同情も様々でした。
何事においても、人から非難されることなどないような身分の者は気楽なものです。
世の中で抜きん出ている高貴な方はかえって窮屈なことが多いものです。
※雰囲気を重んじた現代語訳です。

新年度が始まって少し忙しかったもので更新が滞ってしまいました。
徐々に伊勢への下向が近づいてきていることが語られています。
光源氏の意のままにならない女性が出てくると無性にその女性を応援したくなるのはモテない男の僻みでしょうか。笑
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