枕草子~大進生昌が家に~(2)


~前回のあらすじ~

1)中宮様が出産のために内裏を離れ、大進生昌の邸にお移りなさることになりまちた。ところが生昌邸の北門は狭くて牛車のまま入ることができず、私たち女房は庭を歩いて屋内に入ることになってしまいまちた。

ということです。

今回は邸の主人=生昌と清少納言のやり合いが始まります。o(●´ω`●)oわくわく♪

ではさっそく本文に行きましょう。


【原文】
御前に参りて、ありつるやう啓すれば、
「ここにても、人は見るまじうやは。などかはさしもうちとけつる」と笑はせ給ふ。
「されど、それは目なれにて侍れば、よくしたてて侍らむにしもこそ、おどろく人も侍らめ。
さてもかばかりの家に車入らぬ門やはある。
見えば笑はむ」など言ふほどにしも、
「これ参らせ給へ」とて、御硯などさし入る。
「いで、いとわろくこそおはしけれ。
などその門はたせばくは作りて住み給ひける」といへば、
笑ひて「家のほど、身のほどにあはせて侍るなり」といらふ。〈続く〉


【語釈】
◯「御前」読み:おまへ
『枕草子』で単に「御前」と出てきたら、中宮定子のこと、もしくは中宮定子の前ということ。中宮定子は「宮」「宮の御前」などとも呼ばれる。

◯「啓すれば」
「啓す」はサ変動詞で、絶対敬語。中宮(皇后)や東宮(皇太子)に申し上げるときに使われる。

◯「見えば笑はむなど言ふほどにしも」
「見ゆ」には「見せる/見られる」の意味もある。ここでは「姿を見せる」ということ。「む」は意志の助動詞。「しも」は強意の副助詞。従って「姿を見せたら笑ってやりましょう、などと言う、ちょうどその時に」程度の意味。

◯「御硯などさし入る」
主語は生昌。直前に「ちょうどその時に」とあるので、タイミングよく来た人物、となれば生昌しかいない。生昌が、中宮様に硯箱のふたに食べ物を載せて御簾の内に入れた。


【全訳】
中宮様の御前に参上して、さっきのことを申し上げると、
「ここでも人が見ていないなんてことはないでしょ。どうしてそんなに油断したの?」とお笑いになる。
「ですが、それは見慣れたことですから、しっかりと髪なんかを整えましたら、それこそ驚く人もいるでしょう。
にしても、これほどの家で牛車が入らない門なんてありえないわ。
生昌が来たら笑ってやるんだから!」などと言ったちょうどその時、
生昌が「これを中宮様にさしあげてくだされ」といって、御硯の箱に果物を乗せて差し入れてきたの。
私が「まったく、あなたってチンケでいらっしゃるのね。
なんだってあの門をあんなに狭く作ってお住みになったの?」と言うと、
生昌は笑って「家の程度、我が身の程に合わせているのですじゃ」と答えたの。〈続く〉


というわけです。

清少納言ちゃんの生昌いびりは始まったばかりです。笑

次回はグイグイ切り込んでいくので乞うご期待。゚+。:.+。(*´p∀q`) o【・゚・☆★┣¨キ┣¨キ☆・゚・】

 

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