古典文法①:助動詞の活用の欠損について


助動詞の活用を覚えさせていたところ、質問を受けました。

「何で未然形・連用形がないんですか…泣」

そう、興味深くwktkな感じで聞いてきたのではなく、悲しそうに聞いてきたのです。笑

[◯・◯・む・む・め・◯]と活用する、推量の助動詞「む」についてでした。

ごちゃごちゃ考えずに覚えられたらそれはそれでいいのですが、

このような、ある意味では本質的な質問を受けたのも初めてなのではりきって答えてみました。

懐かしき(?)助動詞の活用表がこれです。

「む」に限らず、活用形が欠けている助動詞がいくつもあります。

活用形が完備している助動詞は置かれる位置について自由がきき、

活用形に欠損がある助動詞は、なるべく文末方向に来たがる、ということになっているのです。


つまり、たとえば「読む」に受身の助動詞「る」と推量の助動詞「む」を組み合わせたい場合。

 

「る」は[れ・れ・る・るる・るれ・れよ]と活用形が完備しているのに対し、

「む」は[◯・◯・む・む・め・◯]と活用形に欠損があるので、「む」は「る」の下に来るのです。

 

つまり、「読む」+「る」+「む」の順になる、ということです。

「る」は未然形接続の助動詞なので、「読む」を未然形の「読ま」にします。

「読まる」となりました。

さらに「む」も未然形接続なので、「る」を未然形の「れ」にします。

「読まれむ」(=読まれるだろう)となりました。


もし仮に・・・絶対にないのですが、もし仮に・・・

「む」の下に「る」が来るということがあったならば、

「る」は未然形接続なので「む」にも未然形が必要だったに違いないのです。

しかし、「む」の下にさらに助動詞がくることなどなかったので、活用形が必要なく、存在しないのです。

「読む」+「つ」+「む」→「読みてむ」(=きっと読むだろう)

「読む」+「ず」+「む」→「読まざらむ」(=読まないだろう)

「読む」+「る」+「ず」+「む」→「読まれざらむ」(=読まれないだろう)

という風に、「む」は何としても後ろに後ろに行かなければ気がすまない助動詞なのです。


ところで、例えば「心静かになすべからわざをば」(『徒然草』112段)という文。

この場合のように文末方面ではない所で使われている「む」は「仮定・婉曲」の用法です。

文末ではなく、文中で使われた「む」(連体形)が推量や意志ではなく「仮定・婉曲」の意味になる

というのは受験生にとって常識ですが、深く考えたことはないと思います。

推量「~だろう」意志「~しよう」適当「~がよい」は現代でも文末方面で使うのが一般的ですよね。

文中の「む」が仮定・婉曲「~としたら/~ような」になる、というのはこのことと関係がありそうですね♪

 

古典文法②>>

 

Posted in 古文

コメントは受け付けていません。