源氏物語~空蝉~(10)


この年配の女房は、小君がその民部という女房を連れて歩いているのだと思って、

「じきに大きくなって同じくらいの背丈におなりになるでしょうね」と言いながら出てきます。

困りましたが、押し戻すこともできず、

渡り廊下の入り口の扉にぴったりと寄りそって身を潜めていた光る君に、この女房は近寄ってきて、

「あなたは今夜は寝殿に控えていらしたのね。

私は一昨日からお腹を壊してどうにもならないから、控えの間にいたのですが、

側仕えの人が少ないといって召し出されたので夜になって参上したのですが。

でもやはり堪えがたくて・・・」と苦しそうで、返事も聞かずに、

「ああ、お腹が、お腹が痛い。また後で」と言って過ぎ去っていった隙に、光る君はかろうじて外へと出なさいました。

やはりこうした出歩きは軽率で危険だ、と懲り懲りなさったことでしょう。

小君をお車の後ろに乗せて、光る君は二条にある自邸にお戻りになりました。

昨夜のできごとを小君にお話しなさり、「やはりお前はまだ子どもだな」と小君をお咎めになって、

また、あの女君のつれない心を、爪弾きをしながら恨めしく思っていらっしゃいました。

小君は、気の毒に思って何も申し上げません。

「私をとても嫌っていらっしゃるようだから、我ながら自分がすっかり嫌になってしまった。

どうして会ってくれないにしても、親しく返事くらいはしてくださらないのだろう。

自分が伊予の介に劣っているとは悲しいことだ」などと、気に入らない気持ちに任せておっしゃいました。

持ってきた女君の小袿を下に敷いてお休みになりました。

小君を前に寝かせ、あれこれと恨んでみたり、話したりなさいます。

「おまえはかわいいけれど、あの薄情な人の弟だと思うと、いつまでもかわいがってやれるか分からないな」

と真面目におっしゃるのを、とても切ない気持ちになりました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


4月で「空蝉」を終わらせるつもりだったのですが、あと1回残ってしまいました。汗

引っ越しがあったので、その準備やら片付けやらで思うように進まず。

引っ越し先(実家)はまだインターネットの環境も整っていないので、GW明けくらいになるでしょう。

 

というわけで、またも光源氏のダメな感じが全開になったところで今回はおしまいでーす。

 

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