源氏物語~夕顔~(24)


夜中を過ぎたのでしょう、風がやや荒々しく吹いていました。

その風が松に吹きつけて音を立てているのが深く響き、

また、怪しげな鳥がしゃがれた声で鳴いていたのを、

「これがフクロウという鳥だろうか」と思いながら聞いていらっしゃいました。

色々と考えてみると、どこからも離れていて嫌な感じがして、人の声もしません。

「どうしてこのように頼りない家に泊まってしまったのだろう」

と思うと、悔やまれて悔やまれてどうしようもありませんでした。

右近はというと、正気を失ったままじっと光る君に寄り添っており、

恐怖のあまり死んでしまうのではないかと不安になるほど震えております。

「この女はどうなってしまうだろうか」と、無我夢中で右近をつかまえていらっしゃいました。

正気をお保ちになっている光る君お一人に、嫌な気分が重苦しくのしかかってきます。

灯火はかすかに点って、母屋の入り口に立てている屏風の上方や、その他どこもが薄暗くてよく見えない中、

ギシギシと床を踏み鳴らしながら物の怪が後ろの方から近づいてくる気配がしてきました。

「惟光よ、早く来てくれ」

光る君はそう願いなさるばかりでしたが、惟光の居所が分からずに、使いの者は方々を訪ね回っているところで、

その夜が明けるまでの間の長さといったら、まるで千夜を過ごしているような心地がしていらっしゃいました。

やっと、一番鶏の鳴く声が遠くに聞こえると、

「何の因果で、このような命がけの目に遭っているのだろう。

我ながら、身分にそぐわない恋をした報いでこんな前代未聞の例を作ってしまうことになりそうだ。

私が黙っていても、どこかから秘密は漏れ、父上がお聞きになってしまうことはもとより、

世の人が色々と口にすることが、上等ではない子どもらの言いはやすことにもなるだろう。

挙げ句の果てには愚かしい評判を手に入れることになるのだろうなあ」

と考えを巡らせなさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


やっと夜明けが近づいてきたところで今回は終わりとなります。

今回は後書き(?)も補説もなしで。

では、また次回。

 

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