源氏物語~末摘花~(26)


源氏物語-末摘花-

黒貂の皮衣ではない、絹・綾・綿など、年配のたちが着るにふさわしいの、

それから、あの門を開けたよぼよぼの老人のもの、と、下々の者のことまでお考えになってお贈りになりました。

このような実用的なものを贈られても、気恥ずかしそうにしないので、気安く感じられ、

後見人としてお世話しようと決心なさって、普通ではない無遠慮なこともなさるのでした。

かつて空蝉の女が油断して見せた宵の間の横顔はかなり醜いものでしたが、

上品な振る舞いによってあまり気にならず、残念には思われませんでした。

この常陸の姫君の出自は空蝉に劣るはずがありません。

なるほど、女の良し悪しは身分や家柄によるものではないものです。

「空蝉は気立てが穏やかで、癪に障るほど頑なだったが、私は結局負けて終わったのだったな」

と、何かにつけて思い出されるのでした。

 

その年も暮れました。光る君が内裏の宿直所にいらっしゃると、大輔の命婦が参上しました。

御髪を櫛でとかすなどの所用を申し付けるときには、色恋めいたことはなく、気楽な感じでしたが、

そんな時も冗談をおっしゃるなど、かわいがっていらしたので、お呼びがなくても、何か話があれば参上するのでした。

「奇妙なことがあるのです。それを光る君様にお話ししないのもひねくれているのではないかと思われまして」

と微笑んだまま何も申し上げないので、

「何だい?私に遠慮などすることはないと思うが」

とおっしゃると、

「どうでしょうか。私自身の悩みならば、畏れながらも真っ先に申し上げるでしょう。

でも、これはとても申し上げにくいことでして」

と、ひどく口が重いので、「また思わせぶって」と憎らしくお思いになりました。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


さて、この巻も終盤に入りました!

ラストスパートです。

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