源氏物語~若紫~(5)


光る君も、

「どうして、海の底に、とそこまで深く思い込んでいるのだろう。

身投げなんてみっともないし、海底の景色も見苦しいだろうに」

などとおっしゃりつつ、まんざらでもなくその女のことをあれこれ考えていらっしゃるのでした。

「このような御病気の折でも、風変わりなことをお好みになる御気性だから気に掛かるのだろうなあ」

と思って拝見しておりました。

「日も傾いてきたが、熱の発作は出ていらっしゃらないようだ。早く京へお帰りになるのがよいと思うのだが」

と供の者がいうと、聖が、

「御物の怪などが取り憑いているようです。

今夜は念のためここで静かに加持祈祷をしてさしあげ、明朝お帰りになるのがよろしいでしょう」

と申し上げると、従者たちは、それももっともなことだと思い、光る君にそのようにお話ししました。

光る君はこのような旅寝はあまりご経験がないので、さすがに興味を覚えて、

「ではそうしよう。夜明け前にここを出るぞ」

とおっしゃいました。

日もたいそう長く、手持ちぶさたなので、夕暮れの濃い霞に紛れて、

先ほど発見した小柴垣の綺麗な屋敷の様子を見におりて行きなさるのでした。

惟光朝臣以外は僧坊へお帰しになり、二人で中の様子を覗きなさると、

西側の部屋で仏像を据え申し上げて念仏を唱えている尼が見えました。

簾を少し巻きあげて、仏様にお花が供えられているようです。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


突然ですが、漢字クイズです。

海松布 と書いて何と読むでしょうか?

正解を知ると、漢字で書かないよ、って思うかもしれません。

そもそもそんなの知らないということもあるでしょう。

この語の成り立ちは「海松」と「布」に分けられます。

「布」は海藻を表す言葉です。

「昆布コンブ」「若布ワカメ」などの漢字に使われます。

ワカメは「若芽」とも書きますけどね。

で、「布」を「め」と読んだとき、古文では海藻全般を指す言葉として捉えていきます。

というわけで、「海松布」は「◯◯め」です。

「海松布」の他に「海松貝」なんてのもあります。

そろそろ正解を言っていいですか?

「海松布」=「みるめ

「海松貝」=「みるがい

です。

 

それがどうした?って話ですよね。笑

実は今回部分の冒頭部分の原文はこうなのです。

「何心ありて海の底まで深う思ひ入るらん。底のみるめも、ものむつかしう」

前回の、明石入道の「思い通りの結婚ができないくらいなら海に身を投げてしまえ」

という遺言を受けての光源氏のセリフなのですが。

古文では「みるめ」が出てくると「見る目」と「海松布」が掛けられているのです。

「海底の海松布も見苦しいだろうし、身投げなんてみっともないだろうに」

くらいの訳をすると掛詞も訳したことになるのですが、海松布と訳しても伝わらないだろうと思ってやめました。

そんな言い訳をしたかったので漢字クイズをやってみた次第です。笑

 

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