浦島太郎[原典版]①


浦島太郎

浦島太郎(浦ちゃん) by.au

皆さんご存じ、浦島太郎。

しかし、絵本や「まんが日本昔ばなし」で知られるお話と、室町時代に作られた「御伽草子」の浦島太郎はストーリーが違うので、原典版としてここに紹介してみたいと思います。


【現代語】※なるべく直訳

昔、丹後の国に浦島という者がおりまして、その子に浦島太郎と申す、二十四、五歳の男がおりました。

朝から晩まで海で魚を捕って父母を養っていたのですが、いつものように釣りをしようと出かけたある日のことでした。

海岸や島や入り江など、ありとあらゆる所で釣りをし、貝を拾い、海松布を刈っていたところ、絵島が磯という所で亀を一匹釣り上げました。

浦島太郎がこの亀に言うことには、

「お前は命あるものの中でも、鶴は千年、亀は万年といって、長寿の者である。突然ここで命を奪うのはかわいそうだから助けてやるのだ。常にこの恩を思い出すがよい」

といってこの亀をもとの海に帰してやりました。こうして浦島太郎は、その日は暮れてしまったので帰りました。

また翌日、海岸の方へ出かけて釣りをしようと思って見ると、遙か遠くの海上に、小さい船が一艘浮かんでいました。

不思議に思ってじっと見ていると、美しい女性がたった一人、波に揺られながら、次第に太郎が立っている所へ近づいてきて漂着しました。

浦島太郎が申し上げたことは、

「あなたはどのような方でいらっしゃって、このような恐ろしい海上にたった一人船に乗っていらっしゃるのでしょうか」

と申し上げたところ、女の人が言ったことは、

「そう、ある所へ行くため、船に乗っておりましたところ、折り悪く波風が荒れ狂って、大勢の人が海へ投げ出されてしまいましたのを、人情深い人がいて、私をこの小舟に乗せて流してくれたのです。私は悲しく思って、鬼の島へ行くことにでもなるのだろうかと、行き先も分からず船の進むままに漂っていたところ、今こうしてあなたにお会い申し上げているのです。これも前世からの深い因縁あってのことでしょう。だから虎や狼のような畜生でさえも、出会った人を縁と思うのです」

と言って、涙を流して泣くのでした。

浦島太郎も、さすがに岩や木と違って心があるので、気の毒なことだと思い、綱を取って船を引き寄せました。

そこで女が言うには、

「ああ、どうか私を祖国へ送り届けてくださいな。ここで見捨てられても私はどこへ行ってどうなるものでしょう。ここでお見捨てになるなら、海上でひとり物思いに沈んでいたのと変わりません」

と何度も言っては泣いたので、浦島太郎も気の毒に思い、同じ船に乗って沖の方へと漕ぎ出しました。

その女性の指図に従って、はるばる十日ちょっとの船路を経て女の故郷に到着しました。


【語釈】

・丹後の国…今の京都府北部。日本海に面している。

・絵島が磯…絵島は淡路島にある月の名所だが、丹後の国から釣りをしに行くにしては離れすぎている。同名の海岸があったのだろうか。

海松布…「みるめ」と読んで、海藻の一種。和歌ではよく「見る目(=外見)」と掛詞になる。


というわけで、いじめられている亀の描写はありません。

女性が漂着して~、というのも現在広く知られているお話にはないものですね。

では続きはまた明日。


【原文】※岩波文庫『御伽草子(下)』

昔丹後国に、浦島といふもの侍りしに、その子に浦島太郎と申して、年の齢二十四五の男有りけり。明け暮れ海のうろくづをとりて、父母を養ひけるが、ある日のつれづれに、釣をせんとて出でにけり。浦々島々、入江々々、至らぬ所もなく、釣をし、貝を拾ひ、みるめを刈りなどしける所に、ゑしまが磯といふ所にて、亀を一つ釣り上げける。浦島太郎此亀にいふやう、「汝、生有るものの中にも、鶴は千年、亀は万年とて、命久しきものなり。忽ちここにて命をたたん事、いたはしければ、助くるなり。常には此恩を思ひ出すべし」とて此亀をもとの海にかへしける。

かくて浦島太郎、その日は暮れて帰りぬ。又次の日浦の方へ出でて、釣をせんと思ひ見れば、はるかの海上に、小船一艘浮べり。怪しみやすらひ見れば、美しき女房只ひとり波にゆられて、次第に太郎が立ちたる所へ着きにけり。浦島太郎が申しけるは、「御身いかなる人にてましませば、かかる恐ろしき海上に、ただ一人乗りて御入り候やらん」と申しければ、女房いひけるは、「さればさる方へ便船申して候へば、折ふし浪風荒くして、人あまた海の中へはね入れられしを、心ある人有りて、自らをば此はし舟に乗せて放されけり。悲しく思ひ鬼の島へや行かんと、行方知らぬ折ふし、ただ今人に逢ひ参らせさぶらふ。此世ならぬ御縁にてこそ候へ。されば虎狼も、人を縁とこそしさぶらへ」とて、さめざめと泣きにけり。浦島太郎も、さすが岩木にあらざれば、あはれと思ひ、綱を取りて引き寄せにけり。さて女房申しけるは、「あはれわれらを本国へ送らせ給ひてたび候へかし。これにて捨てられ参らせば、わらはは何処へ何となりさぶらふべき。捨て給ひ候はば、海上にての物思ひも、同じ事にてこそ候はめ」と、かきくどきさめざめと泣きければ、浦島太郎もあはれと思ひ、同じ船に乗り、沖の方へ漕ぎ出す。かの女房の教へ従ひて、はるか十日余りの船路を送り、故郷へぞ着きにける。


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