さて、それからというもの、何かと言い争う種となって、光る君はますます「あの面倒な女のせいで…」とお考えになるのでした。
女は、それでもなおたいそう色めかしい恨みごとを言ってくるので、迷惑なことだと思いなさって、よそを歩きまわっていらっしゃいました。
頭の中将はこの一件を妹君にもお話しせず、「何かの時にやりこめるネタにしよう」と思っていました。
この上なく高貴な血筋である皇子の方々でさえも、光る君に対する帝のこの上ないご待遇に気兼ねして距離を取りなさるのに、この中将は、絶対に負けまい、と他愛のないことでも張り合おうとなさるのです。
この中将だけが、光る君のご内室の同母のきょうだいでした。
ですから、「あの男は帝の御子というだけのことだ。自分だって、大臣の中でも特に帝の信任を得ている父と、内親王である母との間に生まれたのだ。またとないほど大事にされているということでいうなら負けてはいないし、家柄的にもどれほども劣ってなどいるものか」と思っていらっしゃるのでしょう。
人柄もこの上なく整っていて、何につけても理想的で、不足な点などなくていらっしゃいました。
そのようなお二方の争いは奇妙なものでしたが、煩わしいのでこれ以上のことは記しません。
※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。
「紅葉賀」の巻もいよいよ次回で終了です。
改めて頭の中将について詳しく紹介されましたね。
父親は左大臣、母親は帝の妹宮で、光源氏の正妻・葵の上の兄にあたる人でした。
頭の中将から見ると、帝は伯父、光源氏は従弟にあたるわけです。
では今回はこの辺で。
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